がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

スビアコのBistro des Artistes

Subiacoというパースの一角には昔からトレンディーなバーやクラブが並び、庶民的で観光客も多いNorthbridgeとは少々違った雰囲気だ。特に夜ともなると、グラビアから抜け出たような垢抜けたひとびとが集まってくる街だ。ただし、近年の物価と家賃の高騰でどうも元気がなくなってきたのは否めない。

数年前、ここに1軒のフランス料理店ができた。以前パースの近郊で、知る人ぞ知るLoose Boxというフランス料理を供していたシェフの店だ。グルメを自称するひとなら、Loose Boxという名前を出すだけで「ああ、あそこね」とうなずくほど有名だったが、何しろ遠い。車で1時間ほどなので、ワインと食事だったらタクシーを使わなければならない。いきおい誰かひとりが酒を断って運転することになる。そんなわけで、わたしは2度しか行ったことがない。その店が「ビストロ・デザルティスト」と名前を変えスビアコに移ってきたという話は聞いていたが、なぜか機会がなかった。スビアコにさえネイルサロン以外の目的で行くのは久しぶりだ。

中は明るい典型的なビストロ風、入って右の壁面が全て鏡になっており、実際より広く感じる。フランス語なまりの強い(つまりとてもチャーミングな発音の)スタッフに前菜、主菜、デザートのセット(75ドル)を注文。どれも10以上の皿から選ぶことができる。メニューを選んでいる間に、パンとバージンオリーブオイルが出てくるのが嬉しい。

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そして、まず出てきたのはAmuse Bouche(アミューズ・ブーシュ)と呼ばれる「付きだし」のようなもの。ジャガイモとブリーチーズのタルトレットで、バターの味が強い。さすが、フランス料理。

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次は前菜だ。
わたしは本日のお勧めになっている「帆立貝のバルサミコソース」。甘く酸っぱいソースが効いていて、帆立貝もちょうどいい柔らかさで美味しい。

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友達は「エスカルゴのプロフィテロール」。プロフィテロールは通常デザートに出てくるものだが、それとエスカルゴの組み合わせが面白い…が、甘い。蜂蜜が入っているらしく、エスカルゴがなかったら、デザートとしても通用するぐらいの甘さだ。ひとくち試してみたが、どちらかというとエスカルゴは、プロバンスのハーブにオリーブオイルという昔ながらの調理法のほうに軍配があがると思った。

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さて、メインは「鴨の胸肉の甘いスパイシーソース添え」。うーん、ちょっと歯ごたえがありすぎ。中はちょうどよいピンク色なのだが、ナイフに力を入れなければならないのは肉の質のせいか、ほんの少し焼きすぎたか。手羽の部分は手で持って食べてしまおうと思ったが、繊維がジャマをして肉が食いちぎれない。さすがのわたしも、ここで断念した。ソースは絶品。ただし、やはり甘い。

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友達のメインは、Loose Boxでも有名だった「牛頬肉の赤ワイン煮込み」。12時間煮込んだだけあって、肉はナイフを使わなくても切れるほど柔らかく味もよい。赤ワインの風味も効いている。ただし、ひとくち食べて「塩」を注文。ひとふりしただけでもっと美味しくなった。塩の分量以外は完璧な煮込み料理。

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さて食べ終わってデザートかと思ったら、カマンベールチーズと洋梨が。濃厚なカマンベールに、新鮮な洋梨がさくさくとからむ。

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そして今度こそデザートかと思ったら、またもお口直しの小さなシャーベットが。こちらは、ミックスベリーにほのかなグランマルニエの香りと味がはさんであり、絶品。

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ようやくデザートだ。出てきたのはわたしの大好きなクレーム・ブリュレ。日本のプリンに少々似ているがはるかに濃厚な味だ。ラズベリーが中に混ぜ込んであり珍しい。

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友達のデザートは、パンナコッタとフルーツのジュリエンヌ。上にちょこんと乗った白鳥の姿のクリームがかわいい。

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で、最後に珈琲(わたしは眠れなくなるのでカフェイン抜きのもの)はマキアート。ここでダメ押しのようにプティフール(小さな焼き菓子)が出てきた。大食いのわたしも、さすがにお腹がはちきれそうだ。コースの途中で少しずつ残しているにもかかわらず。

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サービスも感じがよく行き届いているし、インテリアも素朴ながら上品で素敵だ。土曜日だったこともあり、8時ごろには完全に満席状態。食事を楽しむひとびとのざわめきで、雰囲気もとても楽しい。
今回は前菜も主菜も「甘い」料理になってしまって残念だったので、次回は違うものを試してみたい。

 

2 COMMENTS

pooh

Subiaco、懐かしいです!
いえ、わたしは行ったことないですが。
そしてそんなオシャレな街という印象もないのですのが。ふふふ。
母の名前、綾子なのですが、Ayako Subiacoと自分から言って覚えてもらってました。
ちなみにわたしは友達の弟くんからYumiko Port Ricoと言われていました。
関係ないお話でしたね。あはははは。
前菜も主菜も「甘い」は残念でしたが、とても雰囲気の良さそうなお店ですね!

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がび

Yumiko Port Ricoさま、
やややっ。コメントを見逃していました。すみません。
スビアコって昼間は何でもない普通のお店があったりする界隈なんですが、日が落ちるとかならりファッショナブルなひとたちが集まる店が多いです。レストランに入ると、チラチラ見たくなるひとがいますよ。特に週末は。

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