マーガレット・リバーへ:2日目のLeeuwin Estateとタクシー騒動

第2日目の晩は、すでに1週間前から予約しておいたLeeuwin Estate(リューイン・エステート)ワイナリーでのディナー。

ホテルから夕方にはタクシーに電話予約を入れたほうがいいと言われていたので、4時に電話。「今タクシーのシフト入れ替わりの時間で誰もいないから、もう少し後でかけてください。たぶん6時の予約は大丈夫だから」と言われ、「へ?」と思ったのが悪い予感の始まり。大体何だか後ろの騒音がすごい。どう考えても、彼女はタクシー会社の「オペレーター」ではなく、「運転しながら」しゃべっているらしい。

5時に電話をしたら、誰も出ない。「皆手がふさがっているから、もっと後でかけろ」の録音のみ。悪い予感がどんどんどんどんと深まり、2−3分置きにかけ続けていたら5時半ごろにやっと電話に出た。同じ女性だ。「今日は運悪く運転手がふたり休んでいて、もう予約も一杯です」と。さっき繋がったときには、シフト交替時だからもっとあとでかけろ、って言わなかったか? 「とにかく誰も送れません」「それじゃ、困るんです。いつなら大丈夫ですか?」「6時45分なら」「それでOK。」

仕方なくレストランに電話をかけて、40分予約を遅らせてもらう。マーガレット・リバーの市内からなら15分で着くはず。「部屋で待っていますから」と言うと「いや、それじゃだめです。外でお待ちください」と。うわー、5度以下の気温に下がる場所で外待ちかい…。改めて下着をもう一枚重ね、ストッキングをタイツにして待機。

昨日気づいたのだが、2階には部屋だけの客がいるらしい。つまり、階段の踊り場になんでひとが降りてくるのだろうと思ったら、そこにトイレがあるのだ。
今日もわたしが支度をして待機しているときに、ギシギシと階段が鳴って誰か客が戻ってきた。しかし、しばらくすると今度は「いやんあはんあはんいややん」が始まってしまったのだ。古い建物なので防音など無きに等しい。筒抜けである。そのうちに「どすんどすんどすん」まで加わった。「どすんあはんどすんあはんどすんあはん」である。筒抜けなのを知らないんだろうが、晩ゴハン前にスゴイなあと感心してしまった。

さて、6時40分からずっと寒いのでぐるぐると円を描いて歩きながら待つ。そして6時55分になって電話をしたら、今度も「もっと後でかけろ」の留守電だ。一体どうなっているんだ、このタクシー会社。

ずっとかけ続けて繋がったのが7時10分。今度は男性の声。「そんな予約なんか聞いていないよ。今、パブの前のタクシー乗り場で客待ちしてるくらいだから。」
何ということだ。急いで来てくれ、と言ったら本当に3分で来た。

そして、ここからが悪夢の始まり。
マーガレット・リバーは、田舎である。一歩街から出たら外灯などひとつもない。そんな真っ暗な道を、ハイビームのライトをつけて90キロでぶっ飛ばすタクシー。たまにゆっくり走っている車があると、オラオラと煽り、もっとスピードを上げて追い抜いて行く。「全く今週末はパースからの観光客が多くて、ちんたら走っているからイライラする」と言いながら。そりゃ10分で着いてしまったが、生きた心地がしなかった。その間、音量を上げた無線は鳴りっぱなしである。

「帰りはタクシーに電話できますか?それとも今から予約しておいたほうがいいかしら」と訊くと「9時すぎなら、もう静かなもんだからゼッタイ大丈夫」と念を押されたので、そのまま降りた。

リューイン・エステートはコンサートなどでも有名で、各国からの有名なアーティストがやって来て華々しいコンサートを開いては去って行く。パースからはヘリコプターで乗り込むひともいて、パース社交界がそのままそっくり移動することもあるくらいだ。もちろんワインとレストランも一流で、オーストラリアでは何度も賞を獲得している。

そんなレストランに一度は行きたいと思っていたので、今回はDegustation Menuと言われるコースを注文した。全部で6品目、全ての皿にマッチしたワインが1杯ついている。

まずは、Amuse Boucheと呼ばれる「お通し」だ。こじ開けたばかりの南オーストラリア産の生牡蠣がふたつ。ワインは2011年Leeuwin Estate Brut。美味しくないわけがない。少しねっとりとした味わいの生牡蠣にBlutの炭酸がすっきりと合う。

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ところがこれからが長かった。ランチを抜いているので、お腹はすいている。それなのに、生牡蠣ふたつにスパークリングワインが1杯、そして次のコースが出てくる前にすでに白ワインが注がれている。1のコースが出てくるまでに何と20分。いい加減酔っ払ってしまいそうだったので、パンとオリーブオイルを注文して空きっ腹をしのぐ。

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2の皿は帆立貝の刺し身を沈ませた、アボカドとコリアンダーの冷たいガスパッチョスープ。ワインは2013年Art Series Sauvignon Blanc。笑っちゃうほどデカイ皿のど真ん中にテニスボールより小さいくぼみがある。そこにちんまりと刺し身が二切れとスープ。美味しかったが、テーブルの奥行きが狭いので皿が大きすぎて手前にはみ出してしまっている。

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3の皿は…おお、先ほどの真ん中にちょこんとくぼんだだけの大型スープ皿に比べたら、何という小さい皿だ。パン粉をまぶしたタレッジオチーズのフライ。しかし、周りがカリカリでも中はしっとりとした味割りのある1品。ジェルサレムアーティチョーク、サラダ、そしてマスカットでつくられた干しぶどうが添えられていた。ワインは2013年PV Chardonnay。

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4の皿はキンメダイの一種であるナナガイのフィレに梨のスライスとパースニップのピュレー、そしてスペイン産の生ハム・ハモンが添えられていた。ワインは2012年Art Series Chardonnay。見た目は素晴らしいのだが、なぜかこの4つの具があまりグループとして合っていないような気がする。梨のスライスもパースニップのピュレーもどちらも甘い。それが、どうも白身の魚の淡白さとハモンの泥臭い塩辛さと馴染んでいないのだ。ひとつひとつの味が独立してしまっていて、口中調味ができない。

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5の皿はメインコースだ。鹿肉のグリルにマルメロのソース、芽キャベツとパンチェッタのソテー、そしてセロリックのピュレーが添えられている。ワインは2012年Art Series Shiraz。これは美味しかった。鹿肉はあくまで柔らかく、ねっとりとしたマルメロソースがからまって見事な味に仕上がっている。芽キャベツで口中をさっぱりとさせ、またも肉にかぶりつく。ああ、至福。セロリックのピュレーは、さきほどのパースニップのピュレーもそうだが、何やらふわふらしていてたよりない。ここはピュレーなんぞにせず、細切りにしてシャキシャキとした歯ざわりを楽しみたかった。ただし、この辺りからわたしの胃はパンパンで、もうワインも残すぐらいになっている。

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6の皿はチーズだ。貯蔵庫で丁寧に熟成されたチェダーチーズに、イチジクとマルメロのゼリーが添えられている。ワインは2011年Art Series Cabernet Sauvignon。チーズはさすが長いこと熟成されていたものとみえ、ぴりりと舌に触る強い味が特色だ。美味しいのだが、どう押し込んでも全部は食べられない。少し残してイチジクの実をかじった。しかし、この皿はあまりに質素。今までの皿のバラつきに比べても、最後に出てきたチーズではさすがに「ありゃ」と思うひとがいるだろう。

いずれにしろ、これ以上食べられないのはわたしだけではないとみえて、デザートはオプションにしてある。食べられるひとだけご注文ください、ということだ。デザートはもちろん断って、しかも珈琲さえ重く感じられるので、ハーブティーなどという、いまだかつてコース料理のあとに一度も頼んだことのないお茶にした。

さて。ここからがまたタクシー悪夢の再開だ。
支払いを済ませてタクシーへの電話を頼み、席で待っていると…タクシーに繋がらないと言う。繋がらないどころか、電話をはずしているらしくウンともスンとも言わないそうだ。なんということだ。こういうビジネスって一体あるのか。しかし、フロアマネージャーも心得たもので(というより、もしかしてマーガレット・リバーのタクシー事情に通じているからかもしれないが)、「少々お待ちください」と言って優雅な足取りでキッチンに消えた。

しばらくして戻って来ると「キッチンのシェフのひとりがマーガレット・リバーまで帰りますので、送ってくれるそうです。ただし、あと20分ほどで彼女の仕事が終わりますので、少々お待ちください」とのこと。ああ、何という幸運。

待っていると「それではどうぞ」と裏に通された。眼鏡をかけたポッチャリの若い女性が車のドアを開けて待っていてくれる。何度も礼を言って乗り込むと「いやいや、1ヶ月のうちにこういうことは何度もありますから」と。やっぱりそうか…マーガレット・リバーのタクシーを信用してはいけなかったんだ。

おしゃべり好きらしく、運転しながら気さくに色々と自分のことを話す。親がフィッシュ・アンド・チップスの店をやっているので、小さいときから料理の道に進みたかったこと、見習いから始まってLeewin Estateに職が決まったときには嬉しくて飛び上がってしまったこと、一緒に住む恋人も別の店のシェフで、家で料理するときには一緒につくると喧嘩になるので当番制なこと、将来は自分の店を持ちたいということ、などなど。おかげであっという間にマーガレット・リバーに着いてしまったが、くだんのタクシー運転手とは違って安全運転だったことを付け加えておきたい。
車を降りるときにタクシーに渡すつもりだった金額を「これだけは受け取ってくださいね」と渡したら、素直に受け取ってくれた。よくあることなんだろうなあ。

さて、タクシー騒動を抜きにしても、Leeuwinの食事は確かに高い。ワインを入れると、パースの高級料理店で食べられる金額より30%ほど高い。それに見合うだけの料理か、というと品質は同じぐらいというしかない。サービスもよいし、雰囲気も暖かいが、それがパースより30%以上のものか、というとそうとも思えない。しかも、皿の種類に一貫性がなく、バラつき感が否めない。盛りつけにも、あまり重きを置いていない。
ただし、あのように不便な場所であれだけの顧客を集められるマネージメントの力とサービスの質の良さには、確かに頭が下がる。今度はもっと明るい時間帯にランチでお世話になりたい。

そう言えば、Leeuwinのワイン試飲には、Voyagerのように椅子に座って何種類か楽しめるFlightがある。それもひとつひとつ違ったスナックがワインの分だけ添えてある。こういうのも1度ぜひ試してみたい。

次は、第3日目。陶器の窯めぐりですてきな器をいくつか購入。

 

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