がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

飛行機はキライ

タイ航空が派手に遅れてくれたおかげで、バンコク空港イミグレを出たらすでに「今日」になっていた。風邪がまだ完全に直っていないせいで、気圧の変化をもろに受けて、今日になってもまだ耳がよく聞こえない。

よくあることなのだが、隣に座ったカナダ人青年(カナダ航空との共同運航便のせい)が巨大だったので、わたしは自分のシートの2/3しか使えなかった。わたしの荷物を率先して頭上の荷物ケースにいれてくれたり、窓際のわたしのグラスやトレイを自分のに重ねて片付けてくれたりと、知らん顔をすることの多い日本人男性に爪のアカでも煎じて飲ませてやりたいくらいシツケのいいひとだったが、いかにせんデカイ。太っているというのではないが、腕だけでシートの半分ぐらいの幅だ。足も長いから、膝が前のシート背につかえちゃっている。それでも起きているときは意識して小さくなろうとしているのがありありとわかり、かわいそうなくらいだ。
しかし、寝てしまったらもう弛緩状態である。左膝はでれんとわたしのほうに倒れてくる。腕がわたしの肩をぐいぐいと押してくる。知らないひとの「Tシャツからにょっきり出た棍棒のような腕、それも薔薇と槍の刺青付」にべったりくっつくというのは、あまり気持ちのよいものではない。どうにか枕を間に入れて肌の接触を回避したが、そのまま何時間も同じ姿勢でいたため肩がこってしまった。

まあ、彼は隣のわたしの咳と鼻水を知るでもなく、鼻と口を全開にして回りの空気を吸い込みながら寝ていたから、もしかしたら今ごろくしゃみが止まらず首をかしげているかもしれない。

わたしは飛行機という乗り物自体がまずダイキライだが、飛行機の中で腹を立てることも多い。筆頭にあげられるのが、「通路側に座っていて、窓側のひとがトイレに立つときに決して立とうとしないひと」だ。このため、「日本往復の便」でわたしが窓側の席をとることはほとんどない、と言っていい。

飛行機に乗ったことがあるひとなら誰でも思い浮かぶだろうが、ほとんどのひとが長時間のフライトに、シートの背を倒す。この30度ほど自分のほうに傾いた前の座席シートは、ほんの30センチほどの座席と座席の間の空間を完全に斜めに断ち切ってしまうのだ。つまり、まっすぐに自分のシートから立ち上がることは不可能に近い。その状態で「スミマセン」と言ったのに、ただ足をひっこめて席を立たないのは、わたしが見た中では日本人だけである。そりゃあ、頭に乗せたヘッドフォンをとって、毛布をまくり、座席ベルトをはずして立ち上がるのは、マコトにめんどくさい。しかし、足を引っ込められたとは言え、立っているひとが足を割り込ませられるのはなんと15センチほどの空間だ。しかも、斜めになって横切らなければならない。足をすり、ぶつかり、その「座ったままのひと」の膝に腰掛けてしまいそうになることもある。時間もかかる。
「袖摺りあうも多少の縁」とうたった日本人のうちに、隣に座ったひとにさえ思いやりと手間を出し惜しむひとがいるのは、なんだか悲しい。

ぐっすり眠っていたカナダ人青年は、わたしが生理的欲求のために揺り起こしたとき(いや、そんな、アッチの生理的欲求ではなくて、トイレのことだが)はじかれたように飛び起きて、「ごめんなさい」とねぼけ声でつぶやき、席から急いで立ち上がった。
こういう時には、意識しなくても心からの「ありがとう」が口をついて出る。

 

5 COMMENTS

ぴっかぶー

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そうか、JALの日本人は席を立たないのか。
うちの経験を全然違うなぁ。

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がび

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タイ航空だよ。。。それもカナダ航空との共同運航便。
今回はそういうひとを見かけなかったけれど、結構まだ多いです。映画館で席から立たずにひとを通そうとするときより、はるかに狭いんだけれどなあ。見たことない?

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ぴっかぶー

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そうか、タイね。
別に日本人ばっかってわけじゃないないけどなぁ。
いろいろいるよ。

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がび

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えーと、「わたしが見た中では、日本人だけだった」ということで、「日本人だけが、そういうことをする」と断言しているわけでも、「日本人は皆席を立たない」とも言ってないんですがー。
色々なひとが、その経験の中で知ったことを、全てに当てはめることはできません。だから、ぴっかぶーが飛行機の中で、そういうひとに会わなかった、ってことももちろんあるわけです。ラッキーだなあ。
ですから、もちろん、日本人の方で席をさっと立つひともいますし、実際わたしも沢山見ました。ただ、席を立たないひとなどいないだろうと思っているだけに、意地でも座ったまま足をよけるだけのひとは、とても目立ちます。
バンコクー東京便の席で、わたしの前の席にいた日本人女性が(客室乗務員に日本語を話し、日本語の新聞を広げていたからそう思ったのですが)、窓側の席のひとのために立とうとしませんでした。いくら彼女が小さくなっても、通るひとはほとんど通路に出るときにころげそうになってしまいます。
そのときに、そういえばこういうことをする欧米人は見たことがないなあ、と思ったのが、このエントリを書くきっかけです。そのあと、東京ーバンコク便で、カナダ青年がかわいそうなくらいいいひとだったしね。
身体が大きい、小さいの問題ではなく、他人に身体を触れることに気を使う欧米人と、満員電車で慣れちゃっているから、あまり気にならないひとたちの違いでもあるのかなあ。。。

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ぴっかぶー

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なるほどね。
私は、ラッキーだったのか・・・
まあ、いろんな人がいるからなぁ。
こんど、よぉーく観察しとこぉっと。
しかし、寒くなったり暑くなったり、変な天気だ。

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