治外法権を持つ自転車という乗り物

ここ10年以上ほとんど1年に1度2週間しか滞在しない東京だったが、母の介護のおかげで6週間になろうとしている。

これだけ長く滞在していると、街に出て気になるのが自転車という乗り物。
オーストラリアやヨーロッパでは自転車は基本的に「車両」の範囲に入るので、自転車専用の道路がある場合以外は自動車道路を走り、交通規則もそれに準ずる。道を曲がるときには、曲がる方向の手を挙げるのも規則だ。もちろん一方通行路に侵入することはできないし、信号が赤なら止まるのは当然。ひとを乗せることは禁じられているし、自転車用ヘルメットをかぶらなければ罰せられる。

そして、そのどれもが東京の自転車には当てはまらない。

商店街の小さな交差点では、信号が自分側では赤なのに、青の横断歩道を渡るひとびとの「間を縫って」自転車がすり抜けていく。
ひとを器用に避けながら歩道を全速力で走り抜ける自転車の高校生もいるし、曲がり角でいきなり曲がって、歩いているわたしにぶつかりそうになった女性もいる。
一方通行の道路でも車を避けながら反対方向に向かって進む自転車は多く、誰も気にも留めない。

スーパーの入り口では、いつも白髪のガードマンが入り口を塞いで駐車した自転車を辛抱強く並べ直している。

何より驚くのが子供を乗せるシートまで売っていることだ。
前のカゴに子供用シート、後ろの荷台にもうひとつの子供用シート。もちろん、母親もふたりの子供たちもヘルメットなどかぶっていない。急ブレーキでもかけて自転車が倒れたら、子供たちの頭がコンクリートに打ち付けられるという危険が想像できないのだろうか。
先進国ではまず見ない光景だ。自転車は「ヘルメットをかぶってひとりで乗る乗り物だ」と法律に記載されている。

地下鉄の駅の周りには週に何度か「放置自転車監視パトロール員」が出るが、いれば自転車はなくなり、いなければまた通行人を阻むように何台も駐車されている。まるでイタチごっこだ。

今日も横断歩道で信号が青に変わるのを待っていたら、横にすっと止まった自転車がある。何気なく見ると、その前のカゴには路上放置自転車の注意チケットが留めてある。それを堂々とつけたままにしておくことさえ気にならないらしい。

いやはや、自転車は日本では「治外法権」というステータスを持つ乗り物らしい。

 

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