がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

スペイン料理パエリアを中華鍋でつくる

パエリア(Paella)はスペイン、それもバレンシア地方の郷土料理だ。
発音としては「パエーヤ」が多く「パエージャ」とも言うが、そういうことにあまり頓着しないスペイン人(バイリンガルなオーストラリア人のスペイン人母親)によると、「パエーリャでも通じちゃうよ」とのことである。

材料を入れて炒めてから炊くが、「炊く」というよりどちらかというと「煮る」料理でもある。日本のご飯のように「「はじめチョロチョロ、中パッパ 、ジワジワ時に火をひいて 、赤子泣くともフタとるな 」は、スペインやイタリアの米料理をつくるときには、この際忘れたほうがいい。

久しぶりに日本人の友達が夫婦で訪ねてきたので、以前彼らが来た時に大好評を得たパエリアをまたつくることにした。鍋ひとつでできるので、簡単だ。ただし、わたしはあの平たく浅いパエリア鍋を持っていないので、一番大きい中華鍋を使う。普段使うこともあまりないので、物置室に入れてある大鍋だ。

いつもは超特急30分以内料理を得意とするわたしだが、これはご飯を鍋に入れたら速いが、それまでの材料の準備に多少時間がかかる。

paella1まず、赤ピーマン。これは直火で皮をマックロに焦がすほど焼き、ビニール袋に入れて冷ます。あとでズルリと皮が向けたら縦に細く切っておく。海老はアタマと尾をつけたまま殻を剥き、背わたを取る。
さて、いつもの魚屋で買ってきた生の西オーストラリア産スルメイカは、イカスミがとれたら本気で「黒いパエリア」にしてしまうかと思っていた。が、やはり捕獲されたときにすでに煙幕としてバラまいてしまったらしい。残念ながら、入っていなかった。これは、ささっと切り込みを入れて適当に長方形に切っておく。新鮮なイカは、アジア食品店で買える安い冷凍モノとは比較にならないくらい美味しい。
鶏もも肉は食べやすい大きさに。そして、ムール貝は周りについている海藻を引っ剥がしてよく洗っておく。アサリ(前日にチャウダーをつくったときの残り)は解凍。
生の赤ピーマンと緑ピーマン、ニンニク、玉ねぎは粗くみじん切りに。ロックソルトとサフランは、モルターでガンガンと潰してピンク色の粗塩を作っておく。

別のフライパンを用意し、オリーブオイルをたっぷり入れて熱してイカを表面だけ軽く炒める。取り出してから、チョリソー・ソーセージと鶏肉を色が変わるくらいに炒め、また取り出す。これが下準備。

そして中華鍋にたっぷりとオリーブオイルを熱し、粗みじん切りにしておいた赤緑ピーマン、ニンニク、玉ねぎをさっと炒め、別フライパンで炒めた材料を戻し、米を「洗わないで」加える。これを、全ての材料に油のコーティングができるまで中火で炒める。

そこにチキンブロスを1リットル加え、ピンク色になったサフランと塩、スモークパプリカ、庭からむしってきたタイムを入れて煮立て、沸騰したら火を弱める。

paella

米が見えるほど汁が少なくなったら、魚介類(イカ、海老、アサリ、ムール貝)、細く切った赤ピーマン、グリーンピースを入れて蓋をする。干上がりそうだったら湯を足す。このまま10分ほど。貝類が開いたら米を食べてみて、まだ固いようなら湯を足して5分。火を止めて10分ほど蒸らす。イタリアンパセリはざく切りにして、最後に散らした。

材料が多いのでいかにも大変な料理のように見えるが、実際は至って簡単だ。どう作っても、ほとんど間違えようがない。肉と魚介と野菜の味が米に染みて複雑な味のコーラスが楽しめるのは、この豪快な米料理の醍醐味だ。これに、スペイン産の白ワインと楽しいおしゃべりが加われば、夜が更けるのを忘れるのも当然かもしれない。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です