がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

ホームルームの「死んだ魚」

学校では9年生(日本の中学2年生と3年生の中間に当たる)のハウスで担任をしている。「ハウス」というのはハリーポッターの本にもあったが、英国系私立では必ずある生徒たちのグループ分けだ。校内ハウス対抗スポーツも水泳も弁論大会もあり、仲間意識を高める意味でいい伝統だ。

毎日20分ほどそのホームルームがある。連絡事項などをしたあとはちょっとしたゲームをすることもある。科目のセンセイではないので、生徒たちも気楽に担任とは話ができるし、私立女子校の常でベタベタとすぐに抱きついてくるのもこのホームルーム。

さて、今日のゲームはDead Fish。「死んだ魚」というブッソウな名前だが、ルールは至って簡単だ。まず、皆床にごろーんと横になって「死ぬ」。絶対動いてはいけない。その死んだ魚たちを鬼が起こすわけだ。鬼は触る以外は何をしてもいい。顔の前でぱちんと手を叩いてびっくりさせてもいいし、何か面白いことを言って笑わせてもいい。ちょっとでも動いたら負け。その子も立ち上がって鬼になる。

「はじめっ」のわたしの声で、皆思い思いに横になり死んでいる。その様子は結構真剣でわたしは笑いを噛み殺しながら眺めていた。13-14歳ぐらいの箸がころんでもオカシイ年頃の少女たちなので、次々と鬼が増えていく。

そのうちに、うつ伏せになっている女の子ひとりになってしまった。何を言っても周りで他の鬼たちが踊りまわっても、びくともしない。ふむ。

そこで「セーラ、スカートがめくれてるよ」と、つい協力。

そりゃ女の子だもの、うつ伏せになっていたセーラはつい手がおシリに行ってしまった。「セーラの負けっ」と鬼たちが叫んで大笑い。
「センセイ、ひどーい」「目的のためには手段を選ばないの。それに、ちょうど休み時間に合わせて終わったじゃないの」

「あ、ホントだー」と、自分でも思わず笑ってしまったセーラの声を先頭に「センセイ、良い週末をー」と言いながらロッカーに駆けていく少女たち。
その後ろ姿に続いて、わたしも金曜日のホームルームを後にした。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です