スロウ・フードの週末:オッソ・ブッコ

土曜日の夕方、やりだすと止まらない雑草むしりに精を出していて、ふと気がついたらすでに4時半。ぎえ、店が全部閉まるまであと30分。小さなシャベルを放り出して、泥のついたジーンズときったない手のまま車に飛び乗る。

この時間のスーパーは大変混んでいるが、もっとも人が群がっているのは精肉売場だ。サインペンを持った店員が、肉のパックに次々とシールを貼って半額の値段を書き込んでいる。巨大なカートに食料品を満載したひとびとが輪を作っちゃっているので、背も幅も買物の量も完全に負けているわたしには、とてもはいる余地がない(というより、売場の棚が見えない)。
「犬猫用生肉の棚」からウロウロと隙間を見つけようとしていると、わたしの横から手が伸びてひとつの小さいパックがその棚に戻された。ペット用ではない、仔牛のすね肉だ。買うのをやめたが、めんどくさいので取り合えず冷蔵の棚ならどこでもいいや、と戻していったらしい。
大きな脛骨が真ん中で存在を主張している。決めた。オッソ・ブッコだ。

たまねぎ、にんじん、にんにくをブツ切りにしてからバターで炒め、柔らかくなったら赤ワイン、ビーフコンソメ、缶トマト、レモンの皮を入れて煮立たせる。火を止めて、ベイリーフ、タイム、オレガノをぱっぱっと加えておく。
肉は、フライパンで両面ともきれいに焦げ目をつける。普通のイタリア料理は、ほとんどオリーブオイルを使うが、このオッソ・ブッコだけはバターだ。もちろん、肉もバターで焼く。
オーブンは180度、肉の上からたっぷりソースをかけて1時間ほどコトコトと煮込む。
実はここからが自己流なのだが、わたしは肉を取り出したソースを煮つめて半分の量にしてもそのままでは使わない。ミキサーでクリーム状にしてしまうのだ。ごろごろと野菜がそのまま残っている素朴なソースも好きだが、ミキサーで回すと意外なほど口当たりのいいソースになるからだ。
肉を焼いている間に、今度はポレンタだ。英語ではコーンミールとも言うが、これを沸騰した同量の湯にバターを落としてから、さらさらと入れてかき回しているとクリーム状になる。塩コショウして、おしまい。

おお、忘れていた。
グラモラータのないオッソ・ブッコなんて、わさびの入っていない握り寿司のようなものである。何のことはない、パセリ・ニンニク・レモンの皮のみじん切りミックスだ。しかし、これをぱらぱらとかけると、こってりしたイタリアン煮込みがぴりっと輝く。
かなり時間のかかる料理だが、実際に調理している時間はそれほどでもない。
でかい脛骨のど真ん中でふるふると震えている骨髄は栄養たっぷり(カロリーもたっぷり)で、これをずずっとすくって食べたらもうやみつきになる。ミキサーでクリーミィになったソースは複雑な深みを増して、柔らかい仔牛肉にからみつく。

こういう料理を、わたしのように普段15分以内で作ってしまう「ファスト・フード」に対して「スロウ・フード」と呼ぶ。もちろんローファットだの健康だのとは無縁だが、素朴でこってりとした素朴なイタリアン煮込みは週末にとてもよく似合う。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA