がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

新しい習慣で、筋肉が目覚めちゃったらしい

ジムに通い始めた。
と、親しい日本人の友人に言ったら、「何の事務?アルバイトなの?」と問い返された。本人はまじめに聞いているものだから、わたしが電話口でいつまでもひぃひぃと笑い続けているのに戸惑っていたが、ついに「ジムは事務じゃない」ことに気づき、自分もひぃひぃと笑い出した。

実は、「登録」だけは様々な土地で何回もしたことがある。根が無精者のせいか、長続きしなかっただけだ。いつも何かしら言い訳があり、2−3回行っただけで通わなくなった。もう少し若かったこともあり、自分の健康を過信していたフシもある。

十二月のこと、近所のショッピング通りを歩いていたら、いやに筋肉モリモリの女性に声をかけられた。
「健康のために、ちょっと運動してみませんか?」
女性だけのジムが新しくできたのだ、という。彼女の後ろには真新しい看板がかけられているが、ガラス張りの正面は美しいラウンジ風の造りで中は全く見えない。好奇心で入ってみたら、そのラウンジの後ろがジムになっていた。様々なマシンと四角い板が交互に置かれ、それが丸い輪になっていて順番に30秒ずつエキササイズを行うらしい。今はやりの「サーキット」というシステムだ。

普通のジムと違うところは、全員が女性でしかも一ヶ月に一度は全サイズ、血圧、体脂肪などを全て測定してくれることだ。化粧もいらない。若くてハンサムな男性を意識することもない。汗をかきながらハアハアフウフウと髪振り乱して運動しても、誰も関心を持たないし持つ必要もない。
トレーナーが輪の真ん中に常駐して、目を光らせている。間違った姿勢を矯正したり、だらりとこなしている女性にはハッパをかける。10分置きには首筋で10秒間脈拍を測るが、その脈拍数で年齢に合わせて力の入れ方を調節させるのも、トレーナーの役目だ。

これは本格的だと思い、十二月の時点ですでに入会金を払い、一月末に休暇から戻ってきてから実際に通い始めた。誰しも同じ思いとみえて、男性がいないという気安い雰囲気がただよっている。ダイエット目的のかなり太めの女性もいるし、年配の女性もいる。総じて、中年以上のひとたちが多いようだ。

エクササイズは、体の様々な部位を使うマシントレーニングと、四角い板の上で行う有酸素運動に分かれる。これを30秒ずつ交互にこなしながら輪を二周すると、30分。その後ストレッチングが5−10分。つまり、車を使って通っても、うちの玄関を出てまた玄関の鍵を開けるまで50分ほどだ。

こういうふうに汗を流すのは久しぶりだが、通い始めて1ヶ月以上、まだ「やーめた」に至っていない。実は、週に3回の運動がかなり爽快で、このごろ気分がすこぶるいいのだ。しばらく使っていなかった筋肉が目覚めたらしい。

「ねえ、昨日のテレビの***見たあ?」
「今パースに来ているサーカス、とってもおもしろいから、一度は見たほうがいいわよっ」
「新しくできた***ってタイレストラン、おいしいわよー」
「アカデミー賞授賞式の***のドレス見た?太めでもああいうドレスいいわね」
輪になっているから、たとえ運動しながらでもゴシップ話さえ飛び交う。新米のわたしはまだそんな余裕もなく、ただハアハアフウフウと息を荒くするのみだが。

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