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「日本のすり鉢」を夢見るこのごろ

キッチンで一番使う器具は何ですか、と問われたら、わたしは即座にモルターとペストルと答えるだろう。これは、わたしがかなり頻繁にスパイスとハーブを使うからだ。台所接続の小さな食料保存室には、粉にしていない丸のままのスパイス類が瓶入りで整理していあるし、庭には使い切れないほどのハーブ類が雑草のようにうじゃうじゃと生えている。

石臼と訳していたが、これは本来は小さなすり鉢だ。だが、日本のすり鉢とは違い、重い御影石(みかげいし)でできている。スリコギも石だ。化学の実験などでは「乳鉢」と「乳棒」と言うらしい。そして、使いかたは「擦る」というより「叩き潰す」だ。時々、魚屋で見かける安い鮫肉などを使ってハンペンやガンモドキなんか作ってみたいなあ、と思うのだが、わたしのモルターでは小さすぎる。

今回日本に帰っていたとき、母の伊達巻を食べた。
蒸した白身魚とハンペンをやさしく、ごりごりと擦る。ペーストになったら出汁と生卵を少しずつ入れて、擦る。焼いているときのいい香りは、家中にこもってお腹がすいてくる。小さいときのわたしは、この伊達巻作りの「すり鉢担当」だった。タオルを敷いたお膳の上に大きなすり鉢を置き、母の「ゆっくり静かに擦るのよ、卵がはいるとあふれるからね」を背中に聞きながら、自分の腕ほどもあるスリコギをなるべく静かに、だがリズミカルに動かす。おせち料理を食べるのは二日で飽きてしまったけれど、それを作り始める年末の台所は活気があってとても楽しい場所だった。

そう言えば、今は寝てばかりいる老犬ゆうちゃんも、まだ若いときにこの伊達巻を盗んだことがあった。伊達巻は、温かいうちに巻き簾でしばらく形を整えたら、今度は出して冷まさなければならない。そうして隣の部屋に置いてあった太い伊達巻が、三本とも全て消えてしまったのだ。足の短いゆうちゃんでも届くちゃぶ台に置いたのが、間違いだった。しかし、卵十個以上の伊達巻を食べても、病気にもならずピンピンしていたというからさすがだ。(ただし、汚い話だが「大のほう」はしばらく「伊達巻色」だったらしい)

がんもどきやらハンペンを作るのに、電気式の調理ミキサーを使えばいいと思ったこともある。だが、電気の力で高速に練り上げるのがどうも気に入らない。自分の手で様子を見ながら仕上げたい、とどうしてもこだわってしまうのだ。炒ったゴマだって、プチプチと言わせながら擦ったほうが、いい香りにすぐ気づくじゃないか。それに、かかる時間から見たら大して違わない。使ったあとだって、変にデコボコのあるミキサーを洗うくらいなら、すり鉢を洗うほうが手間がかからない。

ああ、日本のすり鉢が欲しいなあ。

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  1. 確かにモルターじゃ食材がすべるから、「する」よりも「つぶす」感じですよね。
    先日友人の台所でお手伝いをしてて、初めてモルターをさわる機会があったのですが、日本のすり鉢感覚ですっていたらすかさず指導が入りました(笑)
    大サイズのすり鉢は帰国するたびに買って帰ろうか迷いつつ、結局断念しているキッチン道具の一つです。
    うちにも以前誰かが置いて行ったミニすり鉢があるんですが(とんかつ屋さんで出てきそうなサイズですね)、これじゃあ力が全然入りません。まるでままごとみたいです。
    アツアツの炒りごまを、油がじんわり出てくるまで無心にすり上げて使いたいレシピがいくつかあります。中途半端はイヤなので、多分次の帰国まで待つことになるでしょう。。。
    あ、すり鉢ではんぺんとは想定外でした。新鮮なおさかなで作ったはんぺんにがんも、おいしいんでしょうね!!

  2. ハトコさん、あのデカすり鉢はちょっと躊躇しますね。何しろあんな大きいコワレモノ、どうやってもって来るかが問題です。うーん。でもほしいっ。
    こないだ、タイ経由でパースに戻ってきたとき、あのスーパーで使う緑色の綿バッグを持つひとを空港で見ました。中にたくさんコワレモノが入っていたけれど、確かに形も大きさも違うお土産にはぴったりです。大きいし、たためるし。
    しかし、あの袋を持って日本から飛行機に乗る勇気があるかなあ、わたし。中には、すり鉢とか茶碗とか土鍋とか入れたりして。

  3. ネパールやウイグルから来た友人が、モルターを使ってました。
    生姜は、おろし金ですりおろすより、モルターでガンガン潰す方が味と香りにパンチがあって、その香りは 微塵切りのそれとも 明らかに違ってました。
    水分の出具合がカレー等のスパイスとして使うには絶妙なのか、
    モルターって、土地の食文化の中で生まれたものだなぁ・・と、大きな発見でした。
    ★ ご自宅で伊達巻作られるなんて素敵!食いしんぼのゆうちゃん 可愛いなぁ。

  4. i-iさん、
    そうです、東南アジアもこれを使いますよね。タイでは、これのもっと大きいのを使ってタイカレーの素を作ったり、グリーンパパイヤのサラダをつぶしながら作ります。たぶん切り口が均等じゃなくて、つぶすほうが対面積が大きくなるから香りも強いんじゃないかと、、、勝手に解釈しています。(笑)

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