がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

ヘルヴェティア系ゲルマン民族の夕食

バンコクに帰ってきたときくらい、タイ料理とか和食を楽しみたいと思うのだが、毎日というわけにはいかない。加えて、わたしのパートナーはゲルマン民族の 末裔であるから、スプーンや箸で優雅に「はさみ」「つまむ」というより、ナイフで「ぶっちぎり」フォークで「突き刺し」というほうが好みである。だから 「久しぶりの家庭料理なのだから、何が食べたい?」と聞いても、返ってくる答えはいつも「肉とじゃがいも~」なのだ。

そんなわけで、今日 は里帰りのたびに作るので、目をつぶってでも出来上がってしまう「ステーキとじゃがいもと付け合せの野菜」である。肉は真空パックで最上級のサーロインを オーストラリアから持ってきたし、じゃがいもと野菜までついでに担いで来た。税関でスーツケースを開けられたら、「今晩の夕食なんです」と言うつもりでも あった。
ステーキは先日ここにも書いたが、焼き加減が難しい。わたしの好みのミディアムレアではなく、今回はゲルマン民族の「ミディアムで赤いところなし、真ん中ピンク」というお達しがあるものだから、わたしのステーキは数分あとからフライパンに入れることになった。
じゃ がいもは実は写真ではわからないが、ブルーポテトという名で、まるでサツマイモの皮のような色をしている。わたしはこれにオリーブオイルをからませ新鮮な ローズマリーをふりかけて、オーブンでこんがりと焼く。焼いてしまえば普通のじゃがいもの皮の色になるから不思議だ。
そして極め付けは、わたしも まだ食べたことがなかった紫色のカリフラワーだ。パース出発前の金曜日に立ち寄った八百屋で、まだ大きな葉に包まれていたのを買ったのだが、まるで染めた のかとおもうほどの濃い紫である。これをゆでるとお湯も染まってしまうが、その分カリフラワー自体は薄紫色になる。味は普通のカリフラワーと同じなので、 オリーブオイルとマヨネーズ少々、そして粒マスタードであえて炒ったケシの実を散らした。

手伝ってくれていた住み込みメイドはその紫色の カリフラワーに目を剥いたが、ひとちぎり口に放り込んで納得したようで、いつものように一言コメントをつける。「こういうカリフラワーこそ、見た目が綺麗 なんだから生で食べればいいんですけどねー。」タイ人は生のカリフラワーを一口切りにして、辛いディップをつけて食べるのだ。わたしはどちらかというと、 生で食べるよりも、またスイス料理の付け合せのようにべちゃべちゃに煮てしまうよりも、歯ごたえが残るくらいにゆでたほうが好きである。

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