あっちの言い分、こっちの言い分

ちょうどバンコクのオフィスを訪ねてきたスイス人は、昨日チューリッヒから着いたばかりだと言う。日曜日真夜中の飛行機で着いて1週間びっちり詰まったス ケジュールをこなし、金曜日の晩にはもうタイよさらば、らしい。「いや月曜日の朝から仕事だってのに、昨日の飛行機は子供がビジネスクラスにいてね え。。。寝られなかったよ」とこぼしていた。
もともとビジネスクラスというのは、こういう着いてすぐ仕事にとりかからねばならないビジネスマンの ために必要不可欠なのだが、里帰り手当てとして支給されるチケットもあるため、海外転勤族の家族も多い。したがってたぶん自費では乗らない若い母親たち も、乳飲み子を連れてビジネスクラスでゆったりと旅をすることができるのだ。

何年か前、やはり乳飲み子を連れたわたしの友達は、そうした チケットでスイスから日本へ帰った。そしてそのときのことを、後に彼女は憤然と語った。「小さい子には気圧で耳が痛くなったり、興奮して寝られないから泣 くのは当然なのよ。わたしの娘なんか、もう火のついたように泣いて、可哀想で可哀想でわたしまで泣きたくなったわ。それなのに、隣のビジネスマンらしきオ ジサンなんか、ちっって舌打ちするわ、ため息は大げさにつくわ、あげくのはて嫌味ったらしく睨むのよ。だから、言ってやったわ。耳が痛くて泣いているの に、可哀想だと思わないんですかって。しょうがないじゃないですか、って。」
うーーん。反論したかったが、あまりに彼女が真剣なので黙ってしまっ た。わたしには、そのオジサンの気持ちがよくわかるのだ。わたしもそうした子供の泣き声に悩まされたことがある。大人には強気でつい一言申し上げてしまう わたしだが、子供には弱い。安いエコノミークラスは、もう半分しょうがないとあきらめるが、腹のたつのはビジネスクラスだ。明日は早くから仕事、少し目で もつぶってリラックスしておかないと、あと数時間で活動開始なのだ。そのために会社でもわたしのためにビジネスクラスを用意しているのであって、まさか何 時間もぐずり、泣き、泣くのに飽きたら今度は走り回る、という「他人の子供」に翻弄されるとは夢にも思っていない。泣きたいのはこちらのほうだ、と思うの はまさにそんなときだ。

そうかと思うと、これまたもうひとりの知り合いは、そうした長旅には軽い小児用睡眠薬は欠かせない、と言う。「子 供用の食事を済ませちゃったらもううちにいるときと同じよ。歯を磨いてパジャマも着せてお気に入りのぬいぐるみを抱かせたら、後はもう着陸寸前まで起きな いもんね。だからわたしは子供連れでもゆっくり酒飲んで映画を見るし、長旅で困ったことなんかなーいの。」
実に様々な母親がいるものである。

写真は、テラスのすみでいきなり満開になっていた美しい花。白い花の先に赤い花がちょんとくっついている。変わった形だ。何の変哲もないツル科の大きな鉢植えだったのだが、花が咲くとは思ってもみなかった。

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