がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

旧式の石油ストーブで

heater連日の寒さで「出不精」となってしまい、正月に姪からうつされた風邪もまだ治らない。インフルエンザの注射をしていても普通の鼻風邪には効かない、と聞かされていたが、本当だった。何よりも、食べ物の味があまりわからないというのがツライ。

一日中エアコン暖房の中にいると、空気がとても乾いていることに気づく。この冬に買ったばかりのエアコンは最新の機能を備えてはいるが、「しっとりナントカ」のボタンを押してもやはり喉が痛くなる。加えて、狭い部屋のエアコンはどこにいても風を感じなければならず、あまりくつろげない。乾いた咳を繰り返していたら、母がどこからか石油ストーブを引きずってきた。

「やだ、まだそんな古いの使ってたの?」
「だって、たまに焼き芋食べたくなるから」

思い出した。
わたしたちの小さいころも、やはり石油ストーブが部屋の真ん中にあった。そのころのストーブは「アラジン」。薄緑色をした独特の丸い筒を持ち、丸い窓から青い炎がちろちろと見える。このアラジンストーブは、暖房の役を果たしていただけではなく、その平べったいアタマにはやかんや、アルミホイルで包んだサツマイモを載せることもあった。だから、わたしの記憶に残る日本の冬は、ストーブの鼻をつく石油とその上でゆっくりと焼けていくサツマイモの匂いをともなっている。

アラジンストーブはその後、少し改良されて丸い筒をたおさずとも点火できるものに変わり、かなり長い間実家の居間を暖めてきた。しかし今母が大事に使っているのは、このアラジンではなく後ろに反射鏡を持つ型だ。アラジンは全て寿命をまっとうしてしまったらしい。

もっと新しい「石油温風ヒーター」と呼ばれるストーブもあるのだが、「風がイヤだし、危ない」と母は言う。が、この新しい石油ストーブが前方に風を送るタイプなので、上部で「イモが焼けない」というのが本当の理由らしい。

旧式の石油ストーブに火を入れると、赤い灯がめらめらと上がる。それを調節して落ち着かせたら、エアコンのように長いこと待たずとも部屋はすぐに暖かくなった。そして暖かさが優しい。湿り気をおびた熱が、空気を乾燥させることなく広がっていく。
暖かさに惹かれて、十六歳のヨボヨボ愛犬が寝床から出てきた。ストーブの真ん前でゴロンと横になり、もう気持ちよさそうにイビキをかいている。
さて、サツマイモでも買ってこようかな。

 

2 COMMENTS

MAO

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アラジンストーブ!
石油ストーブの王様ですよね、これ。
家(うち)ではまだ現役バリバリですよ。
うれしいのはその上でいろいろなお料理ができること。
部屋を暖め、それと同時に料理も作るという働き者なんですよね。
ぼくはこのストーブのかたちが好きです。
機能美として完成された美しさはデザインを超えている。
アラジンストーブのご縁でもつながるとは。
離日前にまた連絡します。

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がび

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やっぱり、アラジンの「上」で料理していたひとたちって他にもいるんですね。
ちなみに、アメリカ人の間でも知っているひとたちは中年以上の世代に限られます。今じゃ使っていないんですね、アチラでは。
日本では、アラジンってまだ売っているんでしょうか。。。(あったら、母に買ってあげたい)

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