がびのテラス - 軽妙にして辛辣、独断にして優雅に

「仙人」はディーラー見習いに応募

週の半ばだと言うのに、あまりよく眠れないせいか疲れた。こういうときは、仕事なんかしないで、テレビを観たり本を読んだりするほうがいい。

ところが、本を開いたとたん「仙人」から電話があった。
わたしの教師友達のひとりだ。背が高くてエンピツのようにかりかりと痩せているし、どうも俗世と性が合わないくせに色々なことに手を出すシンガポール人でもある。だから「仙人」だ。
30も過ぎたので、シンガポールの親がなんと強引に見合いの相手をパースに連れてきたらしい。しかし、あちらでも「三高」は流行だそうで、「背が高いのと高学歴はあるけれど、金がないからなあ」という彼の言葉から、どうやら断られる見込みだ。

「それはそうと、教師の仕事だけじゃなくて、他にも履歴書送った。」どこだと聞いたら、なんとでかいホテルのカジノでディーラー見習いの口だと言う。アジア政治史、中国古典、日本文学で3つも修士を取っておきながら、なんで今度はディーラーなんだ。
その前には教師の口がなくて、「身分を隠して」レストランのキッチン手伝いなんかしていた。キッチンの手伝いなんぞ、彼のような高学歴の履歴書を披露したら悪い冗談かと思われてしまうからだ。

わたしも去年は半年ほど教師の口がなくて失業していたが、彼の場合はもっと運が悪いようだ。
「今度また刺身用の新鮮な魚を買って行くから、寿司食べさせてねえ」とノンキなことを言っているが、そんなお金あるのかいな。

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学校近くの民家で、まだ青い葉に巻かれたままのトウモロコシが1本約40円で売られていた。どうやら知り合いだか親戚だかの農家からのものらしい。2本購入して、うちに帰って葉を広げみると、中からすべすべと輝く豆がずらりと現れた。

実家でトウモロコシを食べるときには、いつもシンプルに茹でるだけ。それに塩をすりこんでかぶりつく。
そう言えば父もこれが好きだったと思い出し、さっそく写真の前に供えた。小さな皿の上に塩をふったトウモロコシが半分。その傍で、残りの半分を口にしながら「美味しいねえ」と呟いてみる。

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