バッセルトンへの日帰りドライブ旅行:Capel Valeワイナリー

夏休み(注:オーストラリアでは12月と1月)が終わって新学期が始まってから、まだ一度も遠出をしていない。「ちょっとお出かけ」というのはストレス解消にもってこいなのに、ここ2ヶ月どこにも出かけていないとは何ということだ。
とは言っても、ここはギネスブックにも載る「世界で一番孤立している都市パース」だ。つまりどこに行くにも遠い。2時間ぐらいならまあ大丈夫だろうと探してみたら、バッセルトン(Busselton)があった。ここには南半球で一番長い1.8キロという木製桟橋があり、その終点の海中観測所ではサンゴ礁も見られる。

決めた。

高速道路をパース近くだったら100キロでぶっ飛ばし、郊外になったら110キロにスピードを上げれば2時間半の道のり。日帰りで行けるぎりぎりの距離だと思う。

日曜日に早く起きることもないよね、と8時半まで寝坊し、珈琲を入れた魔法ビンを持って出発したのが9時半だった。
さて、どれだけパースの「外」が田舎かというと…車の前方はこんな感じ。

左を見てもこんな感じ。

サイドミラーで後ろを見てもこんな感じ。

つまり、真っ青な空と低木がぽつんぽつんと見えるだけの平坦な広野以外、何にもないのである。これがほとんど2時間半の間延々と続く。今日は日曜日だから比較的車もないが、平日だとロードトレインと呼ばれる全長10メートルにも及ぶ連結された列車のようなトラックが走っていることもある。

今回はバッセルトンだけではなく、以前行ったことのあるCapel Valeというワイナリーでランチを取った。2年前、マーガレット・リバーに行く途中に寄ったワイナリーだ。

ここのリースリングがふくよかなシトラスの味わいで美味しかったのを覚えていたので、また12本1ケースを購入。今回は会員登録もしたので20%引きだった。ランチはここのレストランの特色であるワインの種類にマッチしたメニューから、またリースリングマッチを選んだ。もちろん、リースリングも1本。ほんの少し変わっているのは海老が帆立貝になったこと。

以前と変わらず美味しいワインと食事なのだが、ローズマリークリスプと呼ばれる長いカリカリのスティックパイ。塩を間違えて入れたのではないかと思うくらい塩辛くて、とても食べられない。他のものが美味しいのに惜しい。一応スタッフには伝えておいたが、去年から新しいシェフが入ったらしく、味も変わってしまったのかもしれない。それにしてもこんな塩のかたまりのようなクリスプは、自分で食べてみればすぐわかるだろうに。

ワインを郵送してもらう手続きをして外に出ると、ワイン畑の上に低く雲が広がっていた。

駐車場に続く小径は花が咲き乱れていて、香りがさらりと鼻をくすぐる。

さて、ここからバッセルトンまでは30分ほど。ジェッティーのチンチン電車と海中観測所のパックはすでに予約してある。十分に時間の余裕をみてワイナリーを出発した。

パース近郊の港町フリーマントルへ

わたしが週末に半日過ごす「小さな旅」というと、フリーマントルとスワンバレーぐらいだ。何しろパースという西オーストラリアの州都は、ギネスブックにも乗るくらいの世界で「どこの首都からも一番離れている都市」なのだ。一番近い首都はインドネシアのジャカルタである。

そんなわけで、今週はフリーマントルへ。ちなみに地元のひとたちはフリーマントルとは言わない。フリオ、である。なんでも縮めるのが大好きなオーストラリア人にとって、フリーマントルは長すぎるのだ。大体ブレックファスト(朝食)だって豪州スラングではブレッキーである。教師なんか昔はチョーキーと呼ばれていた。つまりチョークを使うヤツという意味だ。現在ではチョークなんか使わないし黒板は白板になったので、「死語」になってしまったけどね。

閑話休題。
そのフリーマントルだが、パースの中心地からだと約20キロほど離れている。そのぐらいなら半日過ごすのに最適なのだ。車を停めるのはいつもの駐車場。フリーマントル・マーケットから2分と離れていない場所で、今日はマーケットの前でジャグリングのペアが面白おかしいおしゃべりで観客を沸かせていた。

そのままテクテクと歩いて向かったのは、フリーマントルの船着き場だ。ここには有名なカイリスというシーフードマーケットがある。パース市内にも魚屋の店を持っていて、パースで「魚」と言ったらカイリスなのだ。ただし、魚屋の魚自体はほかの店より少々高めに設定してある。

ここのマーケットはセルフサービスだ。好きなものを選んで支払い、ブザーをもらって席につく。そうすると、注文ができあがった時点でブザーがなり、取りに行けるというわけだ。今回は、シーフードグリルのミックスに生ガキ。もちろん冷えた白ワインも1本。

この店は船着き場ということもあって、カモメたちが残飯を漁りにやって来る。そのために何人もの若いアルバイトスタッフが待ち構えており、食べ終えた客が立ち去るとささっと飛んできてすぐに皿を片づけてしまう。まるでカモメとの競争である。今日も頭の上の日傘でトトントトンと音がするので見上げたら、カモメが歩いていた。

下から足がちょこんと見えていてカワイイ…が、糞の被害も多くて店としてはスタッフを雇ってでも追い払ってしまいたい鳥たちだ。

ちょうどそのとき、隣の船着き場からレスキュー隊の船が出動した。結構急いでいたので、何か助けが必要なことがあったのかもしれない。周りがのどかにランチを楽しむひとたちや散歩するひとたちばかりなので、なんだか少し緊張する瞬間。

さてランチが終われば、ゆっくりと腹ごなしの散歩。港の近くには難破船博物館があり、その前は「セグウェイ・ツアー」の集合場所となっていた。セグウェイとは電動立ち乗り二輪車のことで、これを使ったツアーがフリーマントルの港周辺で開催されている。ちょっと乗ってみたくなるような仕様で、免許などはいらないらしい。

ついでに難破船博物館にも入ってみた。19世紀の難破船を展示しているだけだが、かなり大きなものもあり、船と一緒に見つかった乗組員の私物なども展示されていて、歴史的にはとても興味深い。入場料は無料。ただし、博物館を維持するための寄付が奨励されていて、わたしもコインをいくつかその箱に投げ入れた。

しばらく行くと、結婚式の写真撮影をしている。フリーマントルには観光客も多く、遠巻きに皆写真を撮っていて、わたしも一枚だけパチリ。遠目だけれどアジア人のカップルだということだけはわかった。

こちらは、わたしも一冊買ってみたくなった不思議な本屋、Elizabeth’s Bookshop。並んでいる本は全てすでに包装されていて、タイトルも表紙も何もわからない。包装も何の変哲もない茶色の包装紙だ。ただし、その上にキーワードだけが記されている。例えば、「イタリアのスリラー」「自由に生きる一匹狼」「殺人」「大学のキャンパス」「三角関係」「動機は?」。どうだろう、何だか読んでみたくならないだろうか。これはこの本屋独自の「Blind Date with a Book」という企画モノで、一冊の本とのブラインドデートという意味だ。プレゼントに買うひともいるし、自分のために買うひともいる。

「本を表紙で判断してはいないだろうか」というコンセプトの元に企画したら、大当たり。今では、オーストラリアだけではなく英語圏の各国に郵送していると言う。

さて、週末のフリーマントルは観光客だけではなく、趣味の女装をして歩いているオジサンたちもいて楽しい。風情からして普段はどこか普通の会社などで働いているのだろう、仕草などが少々ぎこちないし、声もつくってはいない。楽しそうに二人連れで歩いていて、ちょうどわたしが立ち止まって前述の本を眺めていたら、とても美しいイヤリングをしているのがちらりと見えた。海の色の青いビーズがキラキラと輝いている。
「まあ、きれいなイヤリング…」と言ったら、「ありがとう。わたしが自分で作ったのよ、ダーリン」と答えてウィンクまで投げてくれた。

歩き疲れて入ったカフェは小さな広場に面した店。
行き当たりばったりだったが、このExquiseは自家製のパンとケーキでかなり有名な店だった。ご主人は中国人女性。彼女が毎日焼いているクロワッサンやケーキ類は地元でもファンが多いと言う。
わたしたちが注文したのは珈琲とケーキ。珈琲が紙コップなのは少々残念だが、それでも美しいオーストラリアの花が印刷してあって、そこらへんの店の何の変哲もない紙コップよりはいいかもしれない。

チョコレートケーキは、確かに美味しい。ねっとりと舌にからみつくチョコレートとクリームは、甘みが抑えてあって本来のカカオの味わいが嬉しい。ただし、この二足のフォークはとんでもなく食べにくい。細すぎて小さすぎて、ケーキの一口が支えきれないのだ。ポロポロと皿の上に落としながら、いっそのこと手で食べようかと思ったくらいだ。些細なことかもしれないが、これは改良したほうがいいのではないか。ケーキがとても美味しいだけに、惜しい。

外のテーブルでそのケーキと格闘していたら、向かいの店で何やら子供たちが集まっている。皆妖精のような淡い色のドレスを身に着けて背中には羽根まで生やしている。その子供たちの真ん中には、魔女だか妖精だかちょっと見ただけではわからないオトナの女性(たぶんその店のオーナー)がいて、子供たちに向かって色々な妖精世界の話をしていた。

「フェアリーの店」というらしい。この界隈では有名で、週末ともなると子供たちが妖精になりたくて親と一緒に集まってくる。こんな夢のような店があったら、女の子たちは夢中になるだろうなあ。

その小さな広場からまた大通りへ出て、マーケットを通り、果物を少し買ってから駐車場へ。
角には1929年の古い車が何台も並んでいた。よく手入れされていて美しい。こういう車はナンバーも許可証も違うと言う。つまり、趣味の車というわけで平日ではなく週末だけの許可だ。それでも週末ともなると、いろいろな集まりもあり自慢の車を出して乗って行くのだ。中を覗いてみたら、全て美しく手入れされた木造である。現代の車のように(わたしなんかちっともわからない)ボタンが沢山並んでいる「コックピット」と違い、とてもシンプルだ。わたしだってちょっと教えてもらったら簡単に運転できそうなほど、ハンドルの向こう側に何もついていない。

こういうアンチックな車はイベントのときなどにも貸し出されるようで、確かわたしの家の2軒先の家も3台ほど持っていて、週末ともなると白いリボンで車を飾り、運転手のお隣さんも昔の運転手のような制服で出かけて行く。たぶん結婚式用なのだろう。楽しそうだ。いつかこんな車に乗ってみたいな、と思いながら帰途についた。

週末の半日旅行はこんな具合だ。のどかなものだが、これだけでも平日のストレスがすうっと消えていくのがわかる。そうしてまた次の週の忙しさに備えるのである。

タスマニアへ:ホバートからパースへ

4月20日(水)
ローダーデールのモーテルはかなり大きくて、しかもカジノが併設されている。いや、カジノと言ってもパースのようにブラックジャックやカード・テーブルや、1枚10万円単位のチップをやりとりする個室があるわけではなく、Pokiesと呼ばれるポーカー機がずらりと設置されているだけ。地元のひとたちが夜やってきて、パブで酒を飲み、小銭を賭けるというヤツだ。

夕食はここで摂ったが、スパゲッティーは量だけは3人分ぐらいあったが、アルデンテを10分ぐらい通り越してふにゃふにゃだったし、サラダはデザート並みに甘いドレッシングがかかっていてとても食べられたものではない。ああ、パースのレストランが恋しいと思うのはこんなときだ。または、自分で作るパスタ。

ロスのベーカリーでパンのひとつも買って来なかったのが悔やまれた。

夜にかけて雨がポツポツと降り出し気温が一気に下る。そう言えば、ここ1週間曇ったこともあったが、天候にはかなり恵まれていたことに気づいた。帰る日直前の夜に雨が降るとは…送り雨だね。

4月21日(木)
朝食は前日の夕食でよくわかっていたので、部屋で紅茶に口をつけただけでモーテルを出た。雨は激しくなっている。

空港でレンタカーを返してから、ホバート空港のカンタス空港ラウンジへ。
結構混んでいるのは、国内線しかない空港でしかも次はメルボルン行きだから。

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ここの珈琲は大型の全自動で、自分の好みのものが作れる。これは、カプチーノ。すでに朝食として濃いラテを飲んでチーズを挟んだトーストサンドイッチを食べてしまっているので、ビスケットと。

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わたしが乗るカンタス・リンクの飛行機。カンガルー印のカンタス航空国内線用子会社の飛行機だ。天気が急に昨日から悪化したので、暗くてシトシトと雨が降り続いている。

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飛行時間は1時間と15分なので、客室乗務員たちにとってはかなり忙しい。紙の箱に入った食事を配ったり、飲み物を用意したり。例によって飛行機の食べ物がキライなわたしは紅茶だけ頼んだ。

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メルボルン空港のラウンジで1時間半ほど待たされ、そこからは4時間と5分の旅だ。

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飛行機の中ではまたiPadが渡され、今回は日本映画の「あん」を観た。樹木希林と永瀬正敏主演で、どら焼き屋を営む過去のある男とハンセン病患者の交流を世間の偏見を織り込みながら描いている。飛行機の中で鼻をかみながら泣いてしまった映画だ。日本映画の特徴でもあるセリフの少ない淡々と進むストーリーだが、長いことお婆さんを演じてきた樹木希林の自然な演技が実にいい。
若いころから年寄りの役をやる女優には故・北林谷栄がいたが、本当に年をとっってからはものすごく味のある演技をするひとだった。樹木希林も昔はかなりエキセントリックだったが、その若さゆえの棘が抜けたいまのほうがシリアスな老人役が似合う。

いずれにしろ感動して泣いてしまったおかげで、そのあとは映画を続けて観る気が起きず、Kindleで読書をしてつい読みふけっているうちに着いてしまった。早いものだ。

パース空港ではもちろん国内線用ゲートなので、税関なしですぐに荷物が出てくるだろうと思ったら、これが大きな間違い。かなり長く待たされたうえに時間が立つに連れてどんどんと前に出てくるひとが増え、160センチのわたしにはもう前方が全く見えない。どこでどう自分のスーツケースが出るのか、ひとの間を縫って背伸びをしたりかがんだりと目を凝らしていたため、いやはや疲れてしまった。

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今回の旅はルノーのコレオスSUVを借り、タスマニア州の東海岸を行って戻って全部で1022キロ走ってきた。駆け足のタスマニアだったが、1週間以上の旅は久しぶりである。

昔はよく旅をしたものだが、どうも年を重ねると腰を上げるのがおっくうになるのかもしれない。オーストラリアは大きい。またどこかに行きたいと思うようになったのも、今回の旅のおかげらしい。それほど楽しかった。