2009年9月アーカイブ

prawnpizza.jpgバンコクに帰れば、まだほんの少しビジネス時代の友達がいる。転勤組はほとんどスイスやドイツに帰国してしまったので、残っているのは「現地調達ビジネス組」、つまりわたしのようにタイでビジネスを始めてしまったひとたちだ。

今日は、そんな現地ビジネス組と会って、久しぶりのバンコク事情をアップデートしてもらったり、「誰々さんは誰々さんと結婚したんだよー」などというゴシップもたんと仕入れたりして、遅い午後を時間も忘れてちょいとつぶしてしまった。

ところが、帰宅したのは渋滞も合わせて七時、ローストなんぞ焼いていたら1時間以上かかってしまう。すぐにできるものと言ったら……「今週、何かに使うだろう」とさきほど買っておいたピタパンの登場だ。即席ピザは、間に合わないほどお腹がすいているときに、非常に頻繁に登場するわたしの夕食でもある。

レバノン風パン (Lebanese Bread) とも呼ばれるこのピタは平たい円盤状のパンで、くるくるとサラダやハムを巻いてサンドイッチロールにしたり、かりかりに焼いてディップ用のパンにも、そしてわたしのようにピザの台にも代用できる。
普通ピザの台として売っているものは分厚くて、どちらかというと薄くて回りがカリカリのピザが好きなわたしはあまり買ったことがない。第一、本格的にピザが食べたかったら自分で小麦粉を練って作ったほうが美味しい。

さて、まずオーブンに火をいれ、天板にピタを広げてオリーブオイルを軽く塗る。それからトマトソースを塗る。トッピングは、冷蔵庫の中のもの、つまりオリーブ、ケイパー、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム。もっとないかなと探してみたら、あった。冷凍庫の隅っこに、二ヶ月前に買って冷凍しておいた海老だ。前菜に使った残りだが、すでにゆでてあるので使いやすい。これを解凍してからちょんちょんと散らして、最後にこれも今日買っておいたモッツアレッラチーズとグリュイエールチーズを乗せ、あとはオーブンにつっこんだらおしまいだ。十分ほどできれいな焼き目がついたら、火を止めればいい。

手間は全くかけていないが、大切なのはいい素材だと思う。特に市販の千切りになっている溶けるだけのチーズはやめたほうがいい。水牛のモッツアレッラチーズ、そしてもう少し香りと濃厚な味がほしかったのでスイス産のグリュイエールチーズ。こういうものを使うだけで、ただのレバノン風ピタはりっぱなピザに早代わり。

chocoricottacake.jpg外国語科の教師はパートタイムのひとも含めて全部で七人。日本語は、九年生から十二年生まで教えているわたしと七年生と八年生を教えているオーストラリア人教師だけで、あとは全てフランス語教師たちだ。

年に順番で七回誕生日ランチをするが、もちろん均等に一年中あるわけではないから、必然的に誕生日よりもはやくランチパーティーが来てしまうほうが多い。これを、わたしたちはアン・バースディー (Un-Birthday=誕生日じゃない誕生日)と呼ぶ。
十月に誕生日があるわたしのこのアン・バースデーランチは、なんと七月だった。事情を知らない他学科の教師から「誕生日おめでとうっ」と言われ、早めに年取ったようでちっともうれしくない気分を味わったが、こればかりは仕方がない。

さて、先週の水曜日は若いフランス語教師のアン・バースディーで、わたしの担当。車を運転しない彼女のために、学校近くの洒落た紅茶と茶道具の店で商品券のプレゼントを手に入れ、さてケーキをどうしようかと迷った。水曜日は午前中すべて授業なので、ケーキを買いに行く暇などない。久しぶりに、手作りにしようと決めた。

火曜日は早めに学校を出てジムに寄り、そのままスーパーへ。材料を買って帰宅し、晩ご飯と木曜日の授業の準備、そして「ケーキはどうしたっけ」と気づいたときにはすでに九時。あわててオーブンに火を入れ、チョコレートを湯煎にするための湯を鍋に沸かし、レモンの皮を二個分がりがりとけずる。

普段はイイカゲンな目分量のわたしも、ことケーキとなると計量カップを持ち出してかなりきちんと計る。
大きなステンレスのボウルに砂糖を300グラムとアーモンドミールを250グラム入れる。そこにけずったレモンの皮を加え、シナモンパウダーを小さじ半分。わたしは、ケーキを作るときには、よほど大量に必要な場合を除いて必ずバニラビーンズを使う。バニラエッセンスは手軽なのだが、香りは「入れたての珈琲」と「ネスカフェ」ほど違う。このバニラビーンズは真っ黒なサヤにはいっているが、これを縦に切り開いて中の小さなビーンズを取り出して、ボウルにぱらぱらと入れる。サヤは他の料理に使うため冷蔵庫で保存。

ここにリコッタチーズを500グラム、目の細かいザルで漉しながら加える。そして卵の黄身を四つ分。最後に、湯煎にして溶かしたダークチョコレートを250グラム加える。

卵の白身四つ分は、ここで登場。角がたつほど堅く泡立てて、ふんわりと加える。後はバターを塗って小麦粉をはたいたケーキ型(24センチ)に入れ、180度のオーブンで45分から50分ぐらいで焼きあがる。

手順はかなり簡単なのでテレビを見ながらでもできてしまうが、熱いまま型からは出せない。次の日の朝、冷えたケーキを型から出し、粉砂糖をはたいてざく切りにしたピスターチオを散らした。

レシピでもわかる通り、型にはたいた以外一切小麦粉を使っていない。つまり、どっしりとしたリッチでなめらかなケーキだ。リコッタは日本人にはおなじみのティラミスに使うが、こうやって焼くケーキに加えてもとても美味しい。来週27歳になるフランス人の教師は、甘いものに目がない。ランチの後、三分の一ほど残ったケーキを大事そうにアルミホイルに包んで持って帰った。
sweetchillichicken.jpgわたしひとりになってしまったオフィスで残った仕事を片付けていたとき、いきなり調子っぱずれなトランペットに象の遠吠えのようなトロンボーンが重なって、廊下ホールいっぱいに響いた。

小学部のブラスバンドコンサートが今夜だったことを忘れていた。わたしの働く外国語科のオフィスは小ホールから近いのだ。少しの間それでも仕事を続けていたのだが、段々と練習する楽器の数が増えてきて耐えられなくなり、結局退散することに。

六時過ぎてちゃあ店は当然閉まっているから、「あるもので作ってしまう」いつものパターンだ。さっそく鶏肉を解凍して、うーんと考える。鶏肉は安売りのときに丸ごと買った「放し飼いの鶏」。丸ごと冷凍してしまうこともあるが、これは、中華包丁でブツ切りにしてからバラバラにパックしておいたもので、煮るにも焼くにも、気軽に使える量だ。

今日は、オーブンに火を入れてからソースをすばやく作る。みじん切りの玉ねぎ、つぶしたニンニク、生唐辛子のみじん切りに、ケチャップをどぼんと加え、さらにディジョンの粒マスタードと白ワイン酢を混ぜ合わせる。味をみてから、砂糖少々。また味をみてから、今度は冷蔵庫にあったタイ産スイートチリソースと醤油も加える。また味をみてから、今度はウスターソースとオイスターソースなんかも少々。
これだから、ひとにレシピなんかあげられないだけどね。

ソースをしっかり鶏肉にからめてから、ベイキングシートを敷いたオーブントレイに並べ、220度のオーブンでちょいと焦げ目がついてソースがべたつくぐらいになるまで、つまりわたしのオーブンでは50分ぐらい焼く。調理にかける手間は10分ぐらいだが、あとはオーブンがやってくれるので、その間にちょいとワインを開けて、明日の授業の準備さえできてしまう。

さて、ケチャップ使用とここでは書いたが、これはアメリカ英語だからこちらで言っても通じない。オーストラリアでは、トマトソースだ。この加工された甘みの強いソースを使うことはめったにないのに、どうしてそんなものが冷蔵庫にでんと居座っているのかというと、実はオムライスと和風ハンバーグのソースを作るためなのだった。
わたしぐらいの年代は、ケチャップ味の料理で育っているひとたちが多い。スパゲッティーと言ったら、ケチャップをからめたものが洋風料理の付け合せとしてかかせなかったし、ピザだって初期のものはケチャップがベースだった。

だから、わたしがケチャップを使うのは、おかしなことに「和風料理」に限られている。若いときからヨーロッパ文化のど真ん中で暮らしてきたので、フライドポテトにだってケチャップをつける習慣はないし、料理にも全くと言っていいほど登場しない。トマト味がほしいときは、ホールトマトを使うからだ。

そんなわけで、この鶏肉料理は、オーブンを使う以外ほとんど日本の家庭料理の味になってしまっている。ご飯に合うのは当然と言えば当然。それに、このぐらいの時間をかけると、鶏肉は骨からすぐ離れるほど柔らかくなっているし、ソースは甘辛く匂って肉にからみつく。解凍したご飯一膳はまたたくまになくなってしまった。

braisedporkshoulder.jpg昨日土曜日は20校合同の12年生のための会話練習会で、とてもじゃないが「買出し」の暇がなかった。普段の掃除も洗濯も、とどのつまり日曜日にやらなくてはならない。採点の残りもある。日曜も開いている肉屋と新鮮な野菜マーケットに行って、取りあえず肉と卵と今週の分の野菜を仕入れた。

どうせ家中掃除をしなければならないんだから、ということで今日は煮込みだ。これなら、ずっと傍にいることもない。

まずはゆで卵を作る。わたしの作るゆで卵は、沸騰させた湯にそうっと割れないように落としてきっかり6分。茹で上がった卵は、剥かないでまんべんなく叩いて割れ目を入れるだけにしておく。これは煮た後にきれいな模様がつくため。

煮汁は目分量ではあるが、だいたい水が6リットルほど、紹興酒が3カップ、そして醤油、砂糖、つぶしたニンニク、スライスしたショウガ、ネギの青いとこ、ゴマ油、八角、シナモン、オレンジの皮。これを全て鍋に入れて煮立て、沸騰したら20分ほどことことと弱火で煮る。時間のあるときに作って冷凍したものを、今回は使った。

この煮汁をル・クルーゼの重い鍋で沸騰させ、豚の肩肉の塊とゆで卵と生シイタケを沈める。後は、鍋まかせだ。焦げ付かないように時々見るだけで、2時間ほど。できあがったら、豚肉を適当に裂いてご飯の上に盛り、煮汁をさらっとかけてゆで卵を添える。

柔らかく煮込んだ風味のよい豚の肩肉は、やめられないほどご飯が進む。たくさん作ってしまったので、残りは小分けにして冷凍に。

これは、豚足を使うタイの屋台の味カオ・カームーによく似ているんだけれど、肩肉を使ってもうすこしスパイスを加えることで、ひとが来た時にも供することができるちょいと洗練された味になった。