2006年12月アーカイブ
今年も残すところ八時間、日本は時差があるから六時間となった。なんだかこのごろの時は本当にアッと言う間に通り過ぎて行くようで、「こないだハタチだったのに」などとトンデモナイことを呟いてみる。
自分にも回りのひとたちにも色々なことが起き、忙しさにかまけたり、またはとてもコンピュータに向かう気になれなかったり、ぱったりと更新が止まることが多かった。
気ままに書き散らしているだけのブログだが、それでも訪れてくださる皆様に心から感謝。
よいお年をお迎えください。そして、来年2007年もよろしくお願いいたします。
*写真は、パース自宅庭の薔薇。David Austin種のAbraham Darby。
日系スーパーマーケットに行くと、米が山積みされているところで「新米」のスティッカーが目立つ。こちらで作られている米で、タイ米だけではなく「あきたこまち」なんて銘柄の日本米もある。迷わずこれ。タイ米は、オーストラリアでもスーパーで買えるので。パースにも日本米があるにはあるが、品数は限られている。
こういうものを買っちゃったら、今日は懐かしの和食でしょう。
とは言うものの、あと一日でバンコクを立ってしまうのだから、米以外は冷蔵庫の整理となった。
鶏ささみは下味をつけてから軽く片栗粉をふり、そのままフライパンで焼く。両面焼き色がついたら、ニンニクとショウガの薄切りを加え、いい香りがしてきたら今度は長ネギのそぎ切りを加える。さっと混ぜ合わせ、酒、醤油、砂糖をぽんぽんと加えたら、また水溶き片栗粉を少々流しいれてとろみをつける。あとは大量に残っていた大根をすりおろしてさっと混ぜて火を止めた。大根は刺身を買ったときにツマ用に買ったのだが、使っても使ってもまだ半分以上残っていた。今日は大根おろしと味噌汁の具に使って、やっと冷蔵庫から消えてくれた。
さて、昨日のポテトサラダも添えてご飯はぴかぴかの新米だ。ささみはとてもやわらかく仕上がったし、さっぱりと大根おろしがからんで食が進む。和食が食べたくなっても素材に苦労しないのが、さすが日本人の多いバンコクの便利なところ。
二十六日の晩起きた台湾大地震の影響は、タイにまで及んだ。国際電話とインターネットが一時、というよりほとんど二十七日いっぱい接続不能という状態に陥ったのだ。アジア・オセアニア地域の通信をつかさどる、台湾沖の海底ケーブルが損傷を受けたためだ。大部分を他のケーブルに迂回させたようで、二十八日と二十九日は速度が非常に遅いものの、一応どのサイトも見られるようになったし、メールもダウンロードできるまでに回復した。
わたしのオフィスはADSLだが、速度は他国と比べると異常に遅い。YouTubeのビデオはリアルタイムで見られない。まずダウンロードしてからだ。プロバイダーは1000Kbpsだと言うが、ダウンロード速度なんてほとんど20-30Kbpsだ。一日に何度も落ちるし、ウィンドウズアップデートなんか始まったら、わたしはもう「さて、食事にするか」とデスクを離れる。ディスプレイの前で、口開けて眠りコケそうになるからだ。それほど、遅い。
だから外資系の大会社はタイの回線を使わず、直接衛星通信で本社とのネット接続をする。つまり、今回の海底ケーブル損傷で二日間イライラしていたのは、弱小オフィス(うちんとこも含む)と個人ユーザーだ。インターネット会議を主催する会社も、またネットを使って株を買っていたひとたちも、ナスビのように青くなった。ネットが使えないため、オフィスに直接書類を持ってきたクライアントは、「これじゃWWWはWorld Wide Waiting だよねえ」と苦笑した。わたしも、実は今月中にインターネット決済をしなければならないものがあったが、オーストラリアの銀行サイトにはもちろん繋がらない。最初のニュースで「海底ケーブル修理には二-三週間必要」と出たときには、冷や汗が出た。今日からは、一応接続に問題はない。
わたしのインターネット歴はもうすでに十年以上になるが、ここまで依存するようになるとは思ってもみなかった。書類にサインをする以外、銀行に直接足を運ぶこともなくなったし、何かの質問をするときにも電話よりメールを選ぶ。時間帯に煩わされないからだ。わたしの働く学校でも、ほとんどメールで連絡が行われる。書類も電子化されているから、ハードコピーが欲しい場合は個人でプリントするだけだ。生徒たちも、最高学年を除く五年間、Macのノートパソコンを支給されている。
事前に決心してコンピュータを持って行かない休暇は別として、いきなり外の世界から遮断されたような不安を覚えたのは、今回わたしだけではないと思う。
行きつけの美容院がフランチャイズ第一号店を出した。車で五分とかからない場所なので、本店を裏切って顧客のわたしも移ってきてしまった。
「忙しいときには、頼んで出張してもらうんです」と言うだけあって、見慣れたタイ人の男の子の顔がある。本店で、シャンプーやカラーの手伝いをしている子だ。可愛い子で鉛筆のように痩せている。仕草も話す態度も柔らかいのだが、いかにせん手と足だけはデカイ。女性用のヒールサンダルを履いていても、カカトが5センチくらい出ちゃっているのだ。
「本人ものすっごく気にしているんで、あまり触れないようにしてるんです」とわたしの担当の日本人美容師が言う。
「いつかお嫁さんになりたい」そうで、日夜自分を磨くこと(美容と料理)にはげんでいるのだが、もうそろそろ兵役の召集状が来るのが大きな悩みだ。タイでは一応全男子に兵役の義務があるのだ。ただ、勉学のためだとか健康のためだとかの理由で、免除になるひとたちも多い。性的趣向はその範疇にはいらないのかと思ったら、どうやら「精神に異常がある」というマコトに不名誉な理由で入隊を免除されるらしい。
「でも、ゲイだからという理由だけじゃだめなんです。証明しなきゃならないんです」
髪を的確にすばやく切りながら、美容師の女性がわたしのアタマの上でささやく。くだんの男の子は隣の席の周りをきれいに掃除している。
「たとえばですね、シリコンいれて胸がぼい~んと大きいとか、オトコの印をちょん切ってしまっているとか、ホルモン注射して体型が変わっちゃっているとか、そんな明らかな証拠が必要ってことです」
へえ。
「**ちゃんは、ちょん切るのもぼい~んもイヤなので、お金貯めて少しの間女性ホルモンを打ってもらおうかと思っているそうです」
なるほど。
もちろん、彼らは同性に性的興味があるわけだから、軍隊のような「オトコの世界」に投げ入れてしまうのは少々無理かもしれない。わたしが長く住んでいたスイスでは、予想される様々な問題のため、「ゲイであること」は立派な兵役辞退の理由となる。「精神に異常がある」とはされない。しかし、日常生活ではまだまだゲイに対する偏見がはびこっていた。
ゲイだろうがストレイトだろうが、女装しようが男装しようが、あまり気にしないのがここタイの日常だ。ノドボトケのとびでた「女性」販売員が、わたしにピッタリの口紅を選んでくれるし、腰に鍵をじゃらじゃらとつけた「男性」エンジニアが、甲高い声で話しながら車の整備をしてくれる。夜の世界の仕事だけではなく、昼間のごく普通の仕事についているひとたちのほうがむしろ多いくらいだから、驚くことでもない。
そんなタイなのに、兵役の免除のための理由となったらいきなり「精神に異常がある」と断罪しちゃうのはずいぶんだなあ。
パースのウィークディランチは、もちろん学校のスタッフルームで食べる。カフェテリアでサンドイッチやサラダを買うこともあるが、ほとんどは手作りのお弁当だ。前日に作ったり、時間のあるときは朝作ったり, 素材も味も気分によって違う。
そう言えば、普段の日は食話休題に載せることもなかったなと思い、同じようなものをバンコクのオフィスでも作ったので記念撮影。
水分を吸ってぐんにゃりとしたサンドイッチのパンは、あまり美味しいものではない。だから材料さえすべてパックして持っていけば、あとはその場ではさむだけで「作りたてのサンドイッチ」が食べられる。
そのチマチマとした料理場面は、箸を使っていることもあって(フツウのオーストラリア人にはもちろん箸を使ってサンドイッチを作るなんて、思いもよらないからだ)なんだかスタッフルームで評判になってしまった。その後、「確かにサンドイッチはその場で作ったほうがウマイ」と納得したのだろう、何人かの教師やスタッフが材料とパンを別々に持ってくるようになった。
さて、今日のランチは「たまごサンドイッチ」だ。さほど想像力を働かさなくとも、ゆで卵のみじん切りとマヨネーズを混ぜるだけで、それなりの「たまごサンドイッチ」ができる。
わたしが作るのは、どちらかと言うとそのヘルシーバージョンだ。ゆで卵はみじん切りというより、卵だとわかるくらいのブツ切り、そこに赤たまねぎのみじん切りを加え、マヨネーズはほんのちょっと、無糖ヨーグルトと粒マスタードをいれて、塩コショウで味をととのえる。雑穀入りの全粒粉パンのスライスに塗ったら、あとは大口を開けてかぶりつくのみ。
サラダはすべてサイコロ切り。トマト、きゅうり、赤と黄ピーマン、セロリに、サンドライドトマト(天日干ししたトマト)の細切りとバジルの葉を加える。ヴィネグレットドレッシングはお弁当のときは別に持っていくが、今日はすぐに食べるので、そのままサラダにあえた。
涼しいテラスでゆっくりと食べるのは、学校の職員休憩室でそそくさと食べるのより、もちろんはるかに気分がいいし、美味しく感じるもの。
メリークリスマス!
ここ五年以上ヨーロッパに戻っていないので、どうも「暑いクリスマス」「雪の降らないクリスマス」が当たり前になってしまった。いくら涼しいとはいえ、熱帯のバンコクではジャケットを着るほどの気温ではないし、パースはそろそろ三十度を軽く越す真夏だ。雪がちょいと恋しくもあるが、スイスで着るような厚手のコートはもうすでに持っていない。
昨日の晩は外食だったので、真夜中近くに買っておいた牛肉を思い出し、台所でゴソゴソとマリネしておいた。マリネ液は相変わらず自己流、赤ワイン、ウスターソース、オリーブオイルを混ぜ合わせ、ニンニクとしょうがをポクポクとたたいてつぶし、ローズマリとタイムを刻んでごっそりと入れてまたポクポクとつぶす。そこに牛肉のかたまりをひたして冷蔵庫へ。
三十分ぐらいのマリネですぐに焼いてしまうときは塩コショウを加えるが、一晩寝かせるときは味をつけない。肉が硬くなるからだ。フライパンで焦げ目をつける直前に、塩コショウする。塩はフレーク、コショウはその場で挽いたもの。味が格段に違う。
あとはオーブンでいい具合に焼けたら、二段目でローストしたローズマリポテトとアスパラガスをあわせて出来上がり。グレービーにマリネ液をちょいと加え、煮詰めたソースをかける。
前菜は、デパートで買ってきたサーモンロールにサラダ。こないだ昼食のために入った和食レストランで出していたサラダを思い出し、シラス干しを加える。ちりめんじゃこのことだ。東京では、「ちりめん」とか「じゃこ」とは言わない。つまり、わたしの母には通じない。あくまで「シラス干し」だ。
ドレッシングは、しょうがの香りを効かせた醤油味にした。
最上階に住むスイス人老夫婦は、ワインとデザートの担当だ。昨日の朝エレベーターで一緒になり、「クリスマス・ディナーの予約を忘れちゃってねえ。どこのレストランももう予約で満杯」とため息をついていたので、何となく招待してしまった。解凍から始まって何日もかかるターキー・ディナーとまでは行かない。いつもの晩ゴハンに前菜を加えただけだが、それなりにサマにはなったかな。
今年後半は新しい学校で教え始めたため、あっと言う間にもう師走。言葉通り走りまくって、気がついたらバンコクで呆けていた。やっと「夏休み」に入った、ということだ。オーストラリアはもちろん季節が反対なので、年末の休暇が一年で一番長い。
一週間前に帰った年末のバンコクはすでに乾季。わたしの一番好きな季節だ。涼しい風がテラスに落ちたブーゲンビリアの葉を舞い上げ、エアコンを使わない部屋のカーテンをふわりと持ち上げる。
サウナにならない台所なら、料理も快適だ。
今日買ってきた豚ロースのかたまりは、タコ糸できっちり形を整えたりせずにそのまま使うことにした。清浄豚肉と謳うだけあって、オーストラリアのものより臭みが少ない。
大きなステンレスボウルに、無糖ヨーグルトを一カップほど。そこに粒入りディジョンマスタードをぼとんと落とし、つぶしたニンニク、ローズマリの葉のみじん切り、塩コショウで味をととのえてから、カルダモンをがりがりと削って加える。豚肉にこのマリネを塗りたくって冷蔵庫で四時間ほど寝かせたら、後は180度のオーブンでじっくりと焼くだけだ。ヨーグルトにカルダモンを加えるだけで、何となくギリシャ風の仕上がりになる。
付け合せは、肉を焼いている途中からオーブンに入れてローストしたニンジン、ズッキーニ、アスパラガス、じゃがいも。
こんな風にジューシィに焼けた豚肉は、分厚くスライスして天板に残った肉汁をかけながら食べる。


