2005年4月アーカイブ
秋も深まったパースでは、最高気温22度という気持ちのよい日々が続いている。朝は少々ひんやりとする10度から11度で、軽いジャケットなしでは肌寒い。
学校の帰りに寄ったスーパーの魚屋の前で、今晩はフィッシュスープにしようと決めたのは、何となく温かいものが食べたくなったからだ。
題して「カリブ海風フィッシュスープ」。
どこがカリブ風なのか、たぶんナツメグとサツマイモが入っているからかな、などと解釈しているが、レシピは一度作っただけなので記憶がたよりない。まあ、計量がイイカゲンなのがわたしの料理の基本(もちろんパイやパンの粉はきちんと計るけれど)なので、気にしない気にしない。
まずトマトを湯むきしてから種を取り除いて、ちょんちょんときざむ。続いて、セロリ、玉ねぎ、チリをやはり同じくらいの大きさにきざんでから、オリーブオイルを熱した深いフライパンでじっくり炒め、ナツメグをがりがりとけずってふりかけ、ついでにオールスパイスもぱっぱっぱっ。
ここに先ほどのトマトを加え、上から野菜コンソメをどぼんとかけてしばらく煮ると、いやいや、いい匂いがしてくるではないか。そしてあまり長く煮るとカタチがなくなってしまうサツマイモの乱切りを加え、約15分ほど。実は、こちらのサツマイモにはあまり甘くなくて身がオレンジ色の巨大なものがある。今回使ったのは、こちらだ。
最後に加えるのは、魚の小さな切り身をいくつか、帆立貝、海老、そしてムール貝。こちらはあまり長く煮ると固くなってしまうので、ムール貝が開くまで待つこと4分。後は味を見ながら、塩コショウを適当にしてオシマイ。
ふんわりと香るナツメグと魚介類のエキスが、じっくりと煮込んだ野菜のスープに混ざり合って、ウロ覚えのレシピにしては美味しく出来上がった。こういうちょいと時間がかかるスープなんてのも、涼しくなってきたこの季節には大変よく似合う。
友達のボーイフレンドがバイク事故で大怪我をしたというので、見舞いに行ってきた。
両手首、両足首の骨折で、見るも無残な状態である。かろうじて指だけは動かせる左手のそばにボタンがあり、何か用があるときに看護婦を呼び出せるようになっている。三日前からすでに3度手術を受け、明日はまた手術だと言う。粉々になった右手首、両足首の骨は完治するまでに数ヶ月はかかるらしい。
三日前、田舎道を時速80km(制限速度内)で走っていた彼は、対向車線上の彼方でスピードをあげる2台のバイクを目撃した。そして、次の瞬間そのうちの一台が坂のカーブを曲がりきれずに転倒、彼の車線にそのスピードのまますべりこんできたのだ。避けることもできず、そのバイクに正面衝突した彼は、バイクごと空中に放り上げられて足から地面にたたきつけられた。ハンドルを握っていた両手首はその衝撃で骨折したのだ。
事故を起こした当の対向車線バイクの運転手は、軽い擦り傷だけである。そして、両手両足を骨折してもまだ意識だけはあった彼が、苦しい息の下から「何てことをしてくれるんだ…」とうめいたとき、立ち上がって彼を見下ろしていたバイクの運転手はこう言った。
「いやいや、バイクに乗るんだったら、当然こういう事態が起こることぐらい覚悟してなくっちゃいけねえよ」
身体さえ動かせたらそのアホウを叩きのめしてやりたかったよ、とベッドの彼は悔しそうに呟いた。事故を起こしておきながら、なんともひどいヤツがいたものである。
加えて、プライベート保険に入っていなかったために、もちろん病院では四人部屋だ。四つのベッドは全て埋まっているが、そのうちのひとつのベッドからしばらくしてものすごい大音量のイビキが聞こえてきた。わたしたちの話す声が聞こえなくなるほどである。
「そうなんだよ。今ちょっと外に出ているもうひとりの男も、すげえイビキをかくんだ。夜中なんか二人で大合唱だよ。だから、僕は麻酔がさめたらもう眠れないんだ」
ほとんど全身ギプスでぐるぐる巻きの彼は、こう言って哀しそうにため息をついた。
踏んだり蹴ったりとは、まさにこのことである。
イタリア人会の裏でそっと営業していたレストランが、ビルの正面に移動して、一般にもオープンするようになった。ここ2-3年、月変わりでイタリアの地域料理のフルコースを提供したり、地元の引退したオペラ歌手の歌が披露されたりと、パースでも話題になっていたレストランだ。
わたしもオーナーと顔見知りになるくらい通いつめたが、今回は久しぶりに「地域料理フルコース・ディ」以外のアラカルトを楽しんできた。
タスマニア産サーモンのカルパッチオから始まって、クルミとチーズのアニオロッティ(写真)、そしてウサギのロースト、レモンとローズマリ風味。そして、とどめのデザートは温かいザバイヨーネ・クリーム。
こういったかなり脂っこい食事をすると、胃にアブラの壁が出来てしまうせいか、ワインもどんどん進んでしまう。食事中はあまり気がつかないのだが、その効果は翌日に「頭痛」と「胃もたれ」となって表れる。つまりは、二日酔いだ。
普通は食事くらいで二日酔いになるわけがないのだが、そのあと「もう一軒行こうよー」の声とともに総勢六人でパブに繰り出しちゃったからいけなかった。
ところが、昨日一日釘を脳天に打たれるような頭痛に息も絶え絶えだったわたしに、友達が電話をしてくる。
「お昼は、飲茶に行こうよー」
聞けば、前日イタリア料理で一緒だったヤツラが全員参加すると言う。あれだけ食べて、1時まで飲んで、翌日の昼にはもう飲茶に舌なめずりができるなんて、一体どんな胃袋をしているんだろう、オーストラリア人は。
ソンクラン休みでのんびりしてしまったおかげで、月曜日にスタッフが戻ってきたとたん大忙しである。
会社のウェブも更新しなければならないし、ミーティングもある。目を通してサインしなければならない書類もデスクに山積みだ。その隣には、来週から始まる学校に持っていく予定の(つまりそれまでに採点を終わらせなくてはならない)答案が何百枚も乗っている。
全部手をつけはしたが、何一つ出来上がっていない。
昨日はそれでも常連となっているイタリアンレストランに行って、たらふく飲んで食べてしまったが、今日はバンコク滞在最後の晩だ。どうしても明日までにそれぞれカタチだけはつけておかないと、秘書に怒られる。(知る人ぞ知る、わたしの秘書はコワイのだ)
ところが五時を過ぎたら、やる気がどんどん失せてくる。何とか景気をつけるほかはない…などと理由をつけて、即席のつまみをつくりフィーノ・シェリーをなみなみとついでまたデスクに戻った。
つまみと言っても、ただヴィンテージのチェダーチーズを切り、パースから持って帰った生ハムのカタマリをスライスして、ミントをはらはらと散らし、コショウをがりがりと挽いただけである。
パースではイタリア食品店ですぐスライスしてもらえるが、それをそのままバンコクにもってくるわけにはいかない。だから、わたしが買うのは「生ハムの最後の切れっぱしパック」。バンコクには、何年か前に帰国した友達から譲り受けた電動スライサーがあり、これを使えば、包丁ではとてもできないような薄いスライスをしゃりしゃりと作ることができるからだ。
さて、シェリーが一本空く前にどのくらい仕事が進むだろうか。
バンコクでも食事を作るが、どちらかと言うと西洋料理にかたよってしまう。レストランの中華料理やタイ料理があまりに安くて美味しいので、自分で作るまでもないからだ。
しかし、今日はスーパーに行ったらパッ・ブン(空心菜)が目にとまる。空心菜は、その名のとおり茎がガランドウ。実は、タイの田舎では水際に雑草のごとく生えているやつだ。頭の中で忙しく換算したら、何とどっさりはいった一束が25円ほどだ。パースの中華食品店の十分の一である。なんてこった。
いずれにしろ、見たらどうしても食べたくなってしまった。
ヒラタケの小さいやつとショウガも一緒に籠に入れたら、そうだ「あわびソース」も買おうと思い立つ。日本ではあまり見ないが、オイスターソースと同じようなとろみと色、カキ風味ではなくもちろんアワビ風味だ。オイスターソースに比べると高価でも、シンプルな野菜炒めにはとてもよく似合う。
外に出たら、今度は屋台のガイ・ヤーンと呼ばれるマリネした焼き鳥が焦げたよい香りを放っている。これも、買うしかないね。
家に帰ってから、さっそく大きな中華なべに油をひいてショウガの千切りを放り込み、香りが出たらざく切りの空心菜とヒラタケを炒めて、焼き鳥に添える。
季節外れの雨が降ったので、今晩はほんの少し涼しくなった。パティオのテーブルに並べた即席夕食を楽しみながらふと顔を上げると、雨が洗ったバンコクの夜景が美しい。
バンコクに帰るたびに、必ず行く美容院がある。
もう何年も通っているので、「ここをこうして、ああして」などと頼まなくても、ちょんちょんと切っていつもの色に染めてくれる。それでも、かなり長くなったときなどに「ばっさりやっちゃってください」と頼むと、「たまには冒険しませんかあ」と聞かれるときもある。しかし、とてもじゃないが勇気が出ない。
今回も、そんな風にしてちょんちょんと切ってもらっているときに、突然「クセ毛」の話になった。
「ボクの髪はチリチリのクセ毛なんで」と、後ろから鏡を見ながら美容師のオニイサンが言う。「昔、高校の野球部だったときに、坊主頭の髪が1cmくらい伸びただけでウネリが出てきちゃいましてねえ、情けなかったですよ。何しろ、帽子をとるともうそこにビッタリ跡がついちゃって、まるでカツラかぶっているみたいで」
隣の客まで、ぶぶぶと吹きだした。
ところが、そのチリチリの彼さえびっくりしたのは、初めて黒人の髪を切ったときだと言う。「普通の櫛もハサミも通らない」そうなのだ。彼らの髪は大変細くて柔らかく、根元から細かいウネリができているので、日本人美容師が使うような目の細かい櫛では歯が立たない。バリカンを浮かせながら使ってどうにか形を整えたそうだが、「縮毛矯正してくれ、って言われなかったんでホッとしました」ともらして、またわたしと周りの客を笑わせた。
人種によって髪の質は違うもので、スイスにいたころはわたしも困ったことがある。あの当時まだアジア系住人が少なかったせいか、美容師たちはそうした髪質の扱い方を知らなかったのだ。
「まああああ、なんて硬くて太いんでしょっ。まるで、ヒモみたいっ」と声を上げられるのもザラだった。
ところが、その硬くてまっすぐな髪は、パーマがかかりにくそうに見えて実は大変かかりやすい。そのため、一度わたしが試したパーマは、「まるで数百ボルトの電気を通したかのごとく」わたしの髪を痛め、半年ほどバクダン頭で過ごすはめになった。
それ以来、チェンマイにいた数年を除いてわたしはパーマをかけたことがない。
「あ、そうそう。髪を切るだけじゃなくて、今度からウチでもアートメイクができるようになりますよ」と、わたしの顔についた細かい毛をブラシではたきながら、美容師のオニイサンがまた話しかける。
「薄い眉毛をなぞったり、アイラインや口紅もできるんですよ。半年は、絶対消えないし。冒険してみませんか?」
朝起きぬけのぼうっとした顔に燦然と輝く、凛々しい眉にくっきりアイライン、そしてマッカッカの唇…絶対やだ。
だから、美容院では「冒険」しないことにしてるんだってば。
カウチポテトというのは、ポテトチップスだかフライドポテトだかを食べながらカウチ(ソファ)に寝そべってテレビを見ることだ。
日曜日にはレストランで夕食をとることが多いのだが、ソンクラン休み最後の日とあっては行きたいレストランのほとんどが閉まっている。こんなときは、鶏肉のドラムスティックを何本か買い求め、ついでにじゃがいもとインゲンも籠に放り込み、最後にビデオショップに立ち寄ってDVDを二本ほど借りるのが一番だ。
冷蔵庫のすみにあったマーマレード少々、醤油、ニンニクのすりおろし、チリパウダー、タイム、香菜の茎を刻んだもの、そしてゴマ油少々を全てボールに混ぜ合わせ、そこに鶏肉をつけこんで1時間。じゃがいもは、縦に四等分してから、ローズマリを刻んでまぶし、オリーブオイルを加えて塩こしょう。それを全て天板に並べ、40分ほどローストする。その間にインゲンをゆで、レモンとオリーブオイルで作ったさっぱりドレッシングをかけてなじませておく。
出来たてのドラムスティックは、アルミホイルをちょいと巻いて手で豪快にかぶりつくのがいい。ローストポテトのローズマリ風味は、市販のフライドポテトなんぞよりずっとおいしいし、簡単だ。
前から見たかったアニメの「Mr.インクレディブル」をDVDに入れて、さてカウチポテトの夜は更けていく。
やっとパースが涼しくなってきたようなのに、学期休みで灼熱のバンコクに戻っている。タイに住むガイジンたちが嘆く「一番暑い季節」だ。
タイには一応四季があるということになっているのだが、「ガイジンたち」の間ではそれは hot, hotter, the hottest の三つでしかない。つまり、「暑い季節」「もっと暑い季節」「一番暑い季節」だ。
今年はタイ正月のソンクランが4月14日から15日までで、そのすぐあとの週末をいれて五日間の休みだ。会社も閉めたため、スタッフはメイドも含めて揃って休暇を楽しんでいる。そんなしんとしたオフィスで、ここ2日ほどかけてヤットコサ movable type を3.15に更新した。わたしが入れていたのは、まだ日本語パッチを手動であてなければならなかった2.61で、ひどく手間がかかってしまった。テンプレートとタグが、3.xからかなり違ったものになっていたおかげである。
アップロードしてみると、スタイルシートやタグが反映されていない(つまり、わたしのミスなのだが)ことが多くて、修正、アップロード、また修正の繰り返し。
まあようやく完成して眉間の皺もやわらいだが、考えてみたら表紙自体はなーんにも変わっていない。「肉眼で見えない部分」で苦戦していたわけで、こんなことなら表紙をすべて一新してもよかったのに…。
検索だけはGoogleのものに取り替えたので、このブログだけではなく「旧がびのテラス」のファイルも含めて gaby.e-nihongo.net 内の全てのアイテムが検索可能になった。
こういうものは、実は忘れっぽいわたし自身にとって大変便利。
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目が疲れたのでちょっと角の店まで歩いていこうと外に出たら、湿度の高い熱気がいきなり体を包んだ。隣の家では、子供たちが水鉄砲とバケツを手に通行人とバイクを待ち構えている。
やばい。
ソンクランでの水をぶっかける習慣は、週末を含んだためにまだ続いているらしい。これじゃあ、一度目があったが最後、頭からホースで水をかけられるのは間違いない。いつものようにカメラを持っていたので、急いで引き返した。


