風邪引きのタイ正月
何か忘れたかな、と思いながら家を出るのは嫌なものである。杞憂に終わるならまだしも、忘れたものに気づいたときにはすでに遅いからだ。
今回の忘れものは、飛行機の中ではおるジャケットだった。
暑いパースから同じくらい暑いバンコクに飛ぶにもかかわらず、飛行機の中というものは北極熊さえ目を覚ますほど寒い。毛布の追加を頼んだにもかかわらず、案の定風邪をひいてしまった。
ここ何ヶ月かひいていなかったのに、まさか休暇が始まったとたん鼻水の洪水に悩まされるとは思ってもみなかった。
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イースターとタイ正月の「ソンクラン」は、ほとんど前後してやってくる。今週末はイースターだったが、来週からはソンクランだ。
そして、都会のバンコクでは外出しても水をぶっかけられることはまずない。せいぜいマンションの周りに住む子供たちが、水鉄砲を持って走り回るくらいだ。
ところが、北の都市チェンマイとなるとそうは行かない。バンコクではせいぜい3日で終わってしまうソンクランも、あちらでは2週間続く。ロックしていなかったわたしの知り合いの車は、大喜びのタイ人にドアを開けられて水びたしになった。色のついた水を盛大にぶっかけられた友達は、まるでゾンビーのような風体で家に帰らなければならなかった。
そして、ドラム缶に氷屋で買ったひとかかえ以上もある氷を入れて、トラックの荷台から通行人に盛大に水をかけたグループには、わたしも参加していた。もちろん、次の日には風邪をひいて高熱を出した。
ところが1週間ベッドでうなされたというのに、頬のコケたわたしに誰も同情してはくれない。トラックの荷台から自分もびしょびしょになって水をかけまくるわたしの姿は、写真となってオフィスに出回っていたのだ。
バンコクの水かけ祭りはほとんど観光名物と化してしまったので、世界各国のバックパッカーたちの集まる一角が一番にぎやからしい。「らしい」と言うのは、わざわざこの時期に繁華街になど足を踏み入れないからだ。
チェンマイのソンクランを経験したら、バンコクで水なんぞかけてもらっても面白くない。
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